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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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たたかう初乳

No.40


 前々回はアミノ酸(No.38「グリシンは快眠アミノ酸」)、前回は乳酸菌(No.39「花粉症と乳酸菌」)と、サプリメント関係の話題が続いていますが、今回も「初乳」のサプリメントです。私は畜産食品(乳・肉・卵)についての教育研究を長く続けてきたため、「初乳」と言われても戸惑いはありませんが、一般の方にとってはどのようなものでしょうか。最近、小林製薬から発売された「たたかう初乳」(下写真)は、その製品コンセプトをうまく消費者に浸透させることができるのでしょうか。


 私たちが通常飲んでいる牛乳は、「常乳」とよばれるもので、子牛を出産してから1週間以上経過した母牛から搾乳して得られます。初乳は、それ以前の分娩後数日間に得られるものです。特に分娩直後の初乳は、常乳と比べると、成分含量が大きく異なっています(下表参照)。


 初乳の大きな特徴として、タンパク質含量が多いことがあげられます。初乳には、タンパク質の中でもIgGなどの抗体が、非常に多く含まれています。人間では、妊娠中に胎盤を介して抗体(IgG)が母親から胎児に移行します。しかし、胎盤からの抗体移行ができない子牛では、疾病予防(免疫機能獲得)のために、初乳に含まれている抗体の摂取がきわめて重要となります。

 なお、人乳と牛乳とでは、栄養・機能的に多くの相違点があるため、人間の乳児を成分未調整の牛乳だけで健康に育てることは不可能です。市販の乳児用調製乳は、多くの工夫により、牛乳を主原料としながらも人間の母乳に近似させてはいますが、残念ながら母乳に匹敵するようなものではありません。


 ところで、子牛の分娩後5日以内の牛乳は、食品として流通させることが法律で禁じられています。そのため、私たちが牛の初乳を口にすることはめったにありませんが、乳牛を飼育している酪農家の皆さんは、家庭内で消費することがよくあります。初乳にはタンパク質が多く含まれていて凝固しやすいという特徴を生かし、豆腐のような形にして食されることが多いようです。「初乳豆腐」あるいは「牛乳豆腐」でインターネット検索すると、酪農家の方のブログなどで紹介されているものが結構みつかります。


 「たたかう初乳」の原料となっている初乳については、製品パッケージ等に記載がありませんが、小林製薬のホームページに掲載されている研究データでは、分娩後6〜7日目の「後期初乳」を実験に使用しているので、おそらくこの後期初乳が製品にも用いられているのでしょう。紹介されているデータでは、カゼの予防や罹患日数の短縮効果などが示されています。後期初乳は、すでに常乳にかなり近い成分含量になっていますが、それでも常乳とは異なる保健的な作用があることも報告されています。

 さて、製品となっている「たたかう初乳」ですが、具体的には何と「たたかう」ということをアピールしたいのでしょうか。製品の外箱には、下の写真のような記載があります。医薬品でも特定保健用食品でもないこの種の食品の宿命として効果効能がうたえないため(No.38「グリシンは快眠アミノ酸」No.39「花粉症と乳酸菌」参照)、この製品でも「休めないあなたに」というような曖昧な表現にとどまっています。


 小林製薬では、「いっしょに学ぼう!初乳学」というホームページを開設して、初乳に関する情報を発信しています。このホームページにある「初乳研究レポート」には、「風邪の予防効果」、「インフルエンザウイルスへの作用」、「ロタウイルス(おなかの風邪)への作用」などが紹介されています。このような初乳の効果についての研究成果は、新聞などでも取り上げられていますので、少しずつ消費者に浸透しているのかもしれません。

 現在、新型インフルエンザのパンデミック(感染爆発)が危惧されていますから、初乳の抗ウイルス作用(インフルエンザ予防効果)も大きく注目されることがあるかもしれません。そうなれば、「たたかう初乳」がヒット商品となる可能性もありそうです。牛乳という私たちにとって親しみのある食品由来の素材を用いていることも、消費者に受け入れられやすい要因と言えるかもしれません。今後の行方が気になる機能性食品のひとつです。
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食品のトピックス | 10:28 | 2009.03.10 Tuesday |