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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ナイシンが正式認可

No.42


 乳酸菌の産生するペプチド性の抗菌物質「ナイシン」(Nisin)については、No.6「乳酸菌の抗菌ペプチド・ナイシンが認可へ」で、食品添加物として認可される方向であることを紹介しました(2007年10月10日)。それから1年半近くが経ち、ようやく先月(2009年3月2日)、食品に使用する保存料として添加物指定されました。これにより、日本でもナイシンを保存料として使用した食品の開発が行えるとともに、海外で製造されたナイシンを添加した食品の輸入も可能になります。


 実は、このトピックス欄にこれまでに掲載された記事の中で、もっともアクセス数の多いものが、「乳酸菌の抗菌ペプチド・ナイシンが認可へ」です。もちろん、食品業界を中心にナイシンに対する関心が大きいことがあるのでしょうが、ナイシンに関するインターネット上の情報が乏しいことも一因でしょう。グーグルで「ナイシン」をキーワードとして検索すると、私の書いた記事がトップに表示されます(2008年4月10日現在)。はっきり言って、たいした情報が記載されているわけではないので、ご覧になってがっかりされた方も多いことと思います。

 先月初めのナイシンの正式認可以降、この記事へのアクセス数がさらに増加していることもあって、ちょっと心苦しく思っていました。また、記事をご覧になった方から、ナイシンについての問い合わせ(入手法など)も、これまでに何件かありました。そのような状況から、今回、再びナイシンをとりあげることにしました(下に示したのは、34個のアミノ酸からなるナイシンAの構造です)。


 ナイシンの添加物指定の詳細については、厚生労働省医薬食品局食品安全部長から出された「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令及び食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」をご覧ください。また、厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課により、「『食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)』及び『食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)』の一部改正に寄せられた御意見等について(ナイシン)」もまとめられています。


 食品添加物としてのナイシンの製造・販売メーカーとしてデンマークのDanisco(ダニスコ)社が世界的に知られており、「Nisaplin(ニサプリン)」という製品名のナイシン素材が各国で使用されています。日本でも、ダニスコ社製のニサプリンが、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社から供給される見通しです。三栄源エフ・エフ・アイ社のホームページには、ナイシンやニサプリンについての情報はまだ掲載されていませんが(2009年4月10日現在)、直接問い合わせをしたところ、ニサプリンとともに、「ナチュラルキーパー」という希釈済みの製品を用意するとのことでした(5月以降に供給予定)。なお、これらの製品についての問い合わせは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の本社工場(大阪市豊中市、TEL:06-6333-0521)で対応していただけるとのことです。

 上述したように、現時点ではインターネットから利用できるナイシンの情報が乏しいのですが、印刷物(文献)の情報も、日本語で書かれたものはあまり多くないようです。私の調べた限りでは、FFIジャーナル(Foods & Food Ingredients Journal of Japan)に掲載された以下の2つの文献が新しくかつ有用なものと思います。
  1. 櫻井稔夫. 2008. 「ナイシン」の特性. FFIジャーナル 213 (5) : 483-489.
  2. 佐藤 良, 小磯博昭. 2009. 日本におけるナイシンの食品保存料としての利用について. FFIジャーナル 214 (1) : 95-101.
 1番目の文献の著者である櫻井稔夫氏は、ダニスコジャパン株式会社の方で、2番目の文献の著者である佐藤良氏と小磯博昭氏は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の方です。そのため、これらの記事ではニサプリンの情報やデータも紹介されていますので、実用性の高い内容となっています。なお、FFIジャーナルは、三栄源エフ・エフ・アイ社が発行し、無料配布している食品関係の総説・解説を中心に掲載している雑誌ですが、無料とは思えない充実した内容のものです。昨年までは月刊でしたが、今年から季刊になってしまったのが少し惜しまれます。この雑誌についての問い合わせ(購読の希望や上記記事の入手等)は、FFIジャーナル編集委員会(TEL:06-6333-0521, E-mail:ffij@saneigenffi.co.jp)にされるとよろしいかと思います。


 ナイシンは1953年に工業的製造が開始され、今日では世界50カ国以上で加工食品に利用されています。今後、日本でどの程度普及していくのかは私にもわかりませんが、ナイシンが食品添加物として安全性が高く、用途によっては非常に優れた食品保存料であることは疑いがないものだと思っています。ナイシン耐性菌の出現など、考慮すべきことがまったくないわけではありませんが、加工食品の安全性を高める有効な選択肢がひとつ増えたことは歓迎したいところです。

 ナイシンを始めとする乳酸菌の抗菌性ペプチド(バクテリオシン)を研究されている方々は、日本の大学や研究機関にも少なからずおられます。ようやくナイシンの使用が認可されたことでもありますので、ぜひそういった専門家の方々から積極的な情報発信を行っていただきたいものです。インターネット等で得られるナイシンについての情報が少ないことが、私はかなり気になっています。
この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
104:TPPと食の安全・安心(2011/11/11)
51:ペプチドの書籍を監修(2009/08/25)
6:乳酸菌の抗菌ペプチド・ナイシンが認可へ(2007/10/10)
ペプチドのトピックス | 11:08 | 2009.04.10 Friday |