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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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味覚センサーの導入

No.48


 先日、私たちの研究室に新しい測定機器がやって来ました。「味認識装置」です。人間の舌に相当するセンサーを備えた装置であるため、この装置自体を「味覚センサー」と呼ぶことも多いようです。テレビや新聞で紹介される機会も多い装置なので、ご存知の方もおられると思います。つい最近(2009/6/27)の「世界一受けたい授業」(日本テレビ)でも、開発者である九州大学の都甲潔(とこう きよし)教授が出演し、味覚センサーの説明をされていました。都甲先生の著書のタイトルにもなっている「プリンに醤油でウニになる」という話もかなり有名になりました。


 私も最初、「プリン+醤油=ウニ」とか、「麦茶+牛乳+砂糖=コーヒー牛乳」といった「味の足し算」の話に心を奪われました。ただ、私は研究として味などの嗜好性の分野はあまり深くかかわったことがなかったので、この装置の導入までは考えませんでした。しかし、その後、ペプチドの研究を進めるにつれて、ペプチドが「体に良い」だけではなく、「おいしい」食品素材であることを意識するようになり、嗜好性(おいしさ)の領域に踏み込みたい気持ちが強くなってきました。これには、嗜好性が特に重要であるペットフードの開発にかかわったこと(No.21「産学官連携でペットフード開発」)も関係しています。

 さて、味認識装置ですが、外観は下の写真のようなものです。ご参考までに、カタログ冒頭の文章を抜粋します。「味認識装置は、人間の舌と同じメカニズムを持ち、さまざまな食品、医薬品などの『味』を数値化できます。独自の『後味』測定により、従来の分析機器では測定できない『コク』、『キレ』も表現できます。また、充実した解析アプリケーションにより、簡単に解析結果が得られます。官能検査のサポートツールとして、商品開発・マーケティング・営業など『味』の客観的評価が必要なあらゆる場面で威力を発揮します。」と書かれています。味認識装置(味覚センサー)の測定原理など詳しいことは、メーカー(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー)のホームページ、あるいは上にもあげた都甲先生の本(『プリンに醤油でウニになる』、ソフトバンククリエイティブ、¥945)をご参照ください。


 メーカーからいただいた資料を見ると、主な納入先として民間企業や試験機関の名前が多くあげられており、大学関係ではそれほど使われていない装置と言えそうです。用途としては、製品(食品)の品質管理や改良・開発といったところが大きなところのようです。しかし、研究用の測定機器としてもかなり魅力的なものであり、大学関係に普及していない要因のひとつは装置の価格かもしれません。幸い今年、私たちは科学研究費補助金の採択を受けることができ、この装置を導入することができました。

 まだ、導入して間もないので、十分に使いこなしてはいませんが、期待していた以上に使える装置だと感じています。操作方法も割合と簡単で、試料をセットして条件を入力すれば、後は自動的に測定してくれます。ただ、データの解釈はそれほど簡単ではなく、測定した項目の数値だけを見て、その食品がおいしいかどうか(嗜好性)をすぐに判断するようなことはできません。なお、味覚項目として測定できるは、下の表にあげた8味で、基本5味(酸味、塩味、苦味、甘味、旨味)としてよく知られているものとは少し異なっています。また、8味は、大きく「先味」と「後味」に分かれ、「先味」は比較的単純な味で後に残らないものであるのに対し、「後味」は持続性のあるものです。


 私たちは、ペプチドやその関連物質(メイラード反応生成物:No.36「コラーゲンとメイラード反応」など)では、とくに「旨味」や「旨味コク」に注目して測定しています。また、ヨーグルトなどの発酵乳では、当然のことながら「酸味」の変化が大きいのですが、「旨味コク」といった項目も製造条件により結構変化することにも興味をもっています。このように、食品関係の試料測定に有効な装置ですが、それ以上にペットフードには効果的に利用できるのではないかと、私たちは考えています。

 ペットフードの場合、イヌやネコを用いた官能試験により得られる嗜好性に関する情報がきわめて限られます。たとえば、人間の場合、「酸味」とか「苦味」といった項目ごとの評価をしてもらうことができますが、ネコやイヌはそんな細かい項目の質問には答えてくれません。通常、2種類の試料(ペットフード)を並べて、どちらを最初に選択するか、あるいはどちらを多く食べるかという試験(2点比較法)しか行うことができません。今後、嗜好性の優れたペットフードの開発にも、味覚センサーは活躍しそうです。

 次の機会には、実際の測定データを用いて、少し詳しい話ができればと思っています。もうしばらくお待ちください。

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248:食品開発とAI(2017/11/10)
195:においの商標登録(2015/08/25)
171:鼻焼肉(2014/08/25)
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食品のトピックス | 10:44 | 2009.07.10 Friday |