<< December 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

<< ゼロ飲料・ゼロ食品 | main | ペプチドの書籍を監修 >>

乳酸菌でメタボ対策

No.50


 前回、ゼロ食品を取り上げましたが(No.49「ゼロ飲料・ゼロ食品」)、このような食品が注目される背景には、メタボリックシンドロームがあります。メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、高脂血症のうち2つ以上を合併した状態です。昨年4月からはメタボ検診も始まっており、私も含めた中高年の多くが「メタボ」に怯えています。メタボ検診の実施意義については議論が続いていますが、この制度の導入によりメタボ対策に関心をもつようになった方が増えたのも確かです。


 ゼロ食品よりも、もう少し積極的な「メタボ対策食品」として特定保健用食品(トクホ)の表示許可を得たものがあります。メタボリックシンドロームの定義から考えると、特定保健用食品のカテゴリーでは、「コレステロールが高めの方の食品」、「血圧が高めの方の食品」、「血糖値が気になり始めた方の食品」、「血中中性脂肪・体脂肪が気になる方の食品」といったものが、メタボ対策食品と言えるかもしれません。以前、この欄(No.46「ペプチドと特定保健用食品」)で、ペプチドを利用したトクホを紹介しましたが、ペプチド利用製品以外のメタボ対策トクホのいくつかを下の写真にあげました。


 ところで、最近話題になっているいるメタボ対策食品の素材として乳酸菌があります。腸内に棲息する細菌と肥満との間に関係があるという研究が、注目されるきっかけになったようです。新聞などでも取り上げられたので、ご記憶にあるかもしれません。2006年にワシントン大学のグループが2つの報告を同時にNature誌(vol.444, pp.1022-1023およびpp.1027-1031)に発表しました。これらの報告では、肥満のヒトがダイエットをする過程で腸内細菌叢が変化することや、痩せたマウスと肥満マウスでは腸内細菌叢が異なることが示されました。


 腸内細菌叢と肥満との関係については、その後も報告が続き、今年のNature誌(vol.457, pp.480-484, 2009)にはヒトの双生児を対象とした研究成果が掲載され、腸内細菌叢には痩せ型と肥満型があることが示唆されています。日本では、雪印乳業が内臓脂肪を低減させる乳酸菌に早くから注目して研究を行ってきました(公開特許公報 特開2008-63227, 特開2008-214253)。その成果を生かして誕生した製品が、日本ミルクコミュニティ(メグミルク)から今年3月に発売された「メタボフリーヨーグルト ガセリSP乳酸菌」です。なお、雪印乳業と日本ミルクコミュニティは、今年10月に経営統合することが発表されています(PDF:177KB)


 雪印乳業と日本ミルクコミュニティにより行われた研究(PDF:175KB)によると、乳酸菌「ガセリSP株」(Lactobacillus gasseri SBT2055)にはヒトに対して内臓脂肪低減効果があります。肥満気味の被験者に、ヨーグルトを1日200グラム12週間食べてもらったところ、ガセリSP株を用いたヨーグルトを摂取したグループでは、内臓脂肪面積が4.6%、皮下脂肪面積が3.3%減少したとのことです。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちにくいと言われていますので、この結果は注目すべきものかもしれません。


 なお、「メタボフリーヨーグルト」は、先日(8月4日)リニューアルされ、製品名から「メタボ」がなくなり「フリーヨーグルト」となりました。日本ミルクコミュニティのプレスリリース(PDF:217KB)によると、「メタボ」という限定されたターゲットだけでなく、「健康効果の高い乳酸菌で、活き活きと軽やかな毎日を送って頂きたい」という想いを込めたとのことです。私も、「メタボフリー」というのはちょっと強烈な製品名かなと感じていました。


 日清食品ニチニチ製薬といった企業も、乳酸菌を利用したメタボ対策食品の開発につながる研究成果を発表しています。以前、「花粉症とヨーグルト(No.39)」でも書きましたが、この種の乳酸菌の効果を本格的に期待するのであれば、ヨーグルトなどの形よりも乳酸菌そのもの(錠剤など)の方が、効果的で継続的な摂取もしやすいように思えます。今後、各社から製品が登場することが予想されますが、どのような形の製品が残っていくのか注目しています。


 近年、メタゲノム解析手法により、菌の分離培養を行わずに腸内細菌叢の解析が可能になりました。腸内菌叢を構成する細菌の種類は非常に多いだけではなく、培養が困難なものも少なくないと考えられており、従来の分離培養法では正確な菌叢解析を行うことができませんでした。今後、ヒトの腸内菌叢と健康状態(肥満や疾病の有無など)の正確な関係が明らかにされていくことでしょう。これにより、さらに効果的なプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)の選択を行うことが可能になり、乳酸菌を利用した食品や医薬品の役割も飛躍的に発展するかもしれません。
この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
187:プリン体と戦う(2015/04/27)
94:ビフィズス菌はデリケート(2011/06/11)
86:乳酸菌・ビフィズス菌と特許(2011/02/10)
82:乳酸菌で虫歯・歯周病予防(2010/12/10)
73:乳酸菌飲料の国際化(2010/07/26)
60:宇宙を旅したヨーグルト(2010/01/12)
49:ゼロ飲料・ゼロ食品(2009/07/27)
47:プロバイオティクス・ストロー(2009/06/26)
46:ペプチドと特定保健用食品(2009/06/10)
39:花粉症と乳酸菌(2009/02/25)
食品のトピックス | 11:00 | 2009.08.10 Monday |