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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ペプチドの書籍を監修

No.51


 今回は、私が監修をした書籍の紹介(宣伝)をさせていただきます。『機能性ペプチドの最新応用技術 〜食品・化粧品・ペットフードへの展開〜』(有原圭三監修, シーエムシー出版)という書籍が、先日(8月7日)出版されました。


 多くの方に読んでいただきたいのですが、かなり高価な専門書籍ですので、企業や大学図書館等による購入に限られてしまうのかもしれません。ご関心のある方は、出版社のホームページに掲載されている書籍案内だけでもご覧になってください。

 このトピックス欄でも、ペプチドについては何回か取り上げました。アミノ酸がつながってできているペプチドは、様々な機能をもっており、近年では、血圧降下作用などの保健的な機能が注目され、多くの食品にも利用されています(No.46「ペプチドと特定保健用食品)。ペプチドはまた、化粧品やペットフードにも使用されるなど、その利用価値はますます高まっています。この書籍の「はじめに」にも書いたのですが、書名に「アミノ酸」や「タンパク質」が入った書籍は結構な数が刊行されてきましたが、それらの中間的な位置にあるペプチドについての書籍は非常に少なく、特に食品などへの応用をメインとしたものは皆無といってよい状況でした。


 本書は、大学や企業の第一線でペプチド関連の研究や開発に携わっておられる36名の方々に参画していただくことにより完成しました。執筆者の内訳は、大学(北里大学、京都府立大学、東北大学、岐阜大学、弘前大学、京都大学、大阪大学)に所属される12名と、民間企業(アリスタライフサイエンス、アース・バイオケミカル、プリマハム、雪印乳業、森永乳業、日本ハム、協和発酵バイオ、天野エンザイム、カルピス、エムジーファーマ、サントリーウエルネス、成和化成、アイシア、ファーマフーズ、ニッピ、不二製油、片山化学工業研究所)に所属される24名です。製品開発の現場に近い民間企業の方々が執筆者の2/3を占めることからも、今後の製品開発に役立つ実践的な書籍かと思っています。

 昨年末に、出版社からこの書籍の企画についてのお話をいただいてから、9ヶ月程で出版に至ることができましたので、書名にあるように「最新」の情報が盛りこめられていると確信しています。執筆者の多い書籍は、往々にして予定よりも刊行が遅れるものですが、今回は執筆者の皆さんのご協力により実に順調に作業が進みました。



 この書籍は、3編34章から成っています。第1編は「総論」で、ペプチドについての基礎的事項および、ペプチド利用の概観的な記述になっています。書籍全体に占める量が少なく、少し物足りない感じもしますが、「応用技術」を重視した書籍であるため、第2編「機能」と第3編「産業」に多くのページを充てています。

【第 1 編 総論】
  • 第 1 章 ペプチドの科学
  • 第 2 章 ペプチドの消化・吸収
  • 第 3 章 食品におけるペプチド利用
  • 第 4 章 化粧品におけるペプチド利用
  • 第 5 章 ペットフードにおけるペプチド利用


 第2編「機能」では、ペプチドの様々な特性(保健的機能性や嗜好性)について、それぞれの領域の専門の方々にまとめていただきました。各章のタイトルを見るだけでも、ペプチドの機能が多様であることがわかります。現在までに、食品などに利用されているペプチドの機能はごく一部のものであり、今後の食品等への展開が期待されます。

【第 2 編 機能】
  • 第 6 章 血圧降下ペプチド
  • 第 7 章 抗酸化ペプチド
  • 第 8 章 抗ストレス・抗疲労ペプチド
  • 第 9 章 コレステロール代謝改善ペプチド
  • 第 10 章 ミネラル結合ペプチド
  • 第 11 章 抗菌性ペプチド
  • 第 12 章 免疫調節ペプチド
  • 第 13 章 神経調節ペプチド
  • 第 14 章 ビフィズス菌増殖促進ペプチド
  • 第 15 章 抗脱毛・育毛促進ペプチド
  • 第 16 章 ペプチドと嗜好性
  • 第 17 章 ペプチドとメイラード反応
  • 第 18 章 アレルギー低減ペプチド
  • 第 19 章 イミダゾールジペプチド
  • 第 20 章 乳酸菌のバクテリオシン


 第3編「産業」では、ペプチドの産業的な利用にスポットをあてています。執筆されているのは、民間企業の方々が中心となっています。製法、特許状況、各種製品への具体的な利用例、市販素材などについて、食品・化粧品・ペットフードなどの開発現場において即戦力となるような記述内容となっています。

【第 3 編 産業】
  • 第 21 章 ペプチドの工業的製法
  • 第 22 章 ペプチドと特許
  • 第 23 章 ペプチドを利用した食品例I
  • 第 24 章 ペプチドを利用した食品例II
  • 第 25 章 ペプチドを利用した食品例III
  • 第 26 章 ペプチドを利用した食品例IV
  • 第 27 章 ペプチドを利用した化粧品例
  • 第 28 章 ペプチドを利用したペットフード例
  • 第 29 章 鶏卵ペプチド素材
  • 第 30 章 コラーゲンペプチド素材
  • 第 31 章 大豆ペプチド素材
  • 第 32 章 畜肉ペプチド素材
  • 第 33 章 牛乳ペプチド素材
  • 第 34 章 小麦ペプチドの機能と食品への応用


 出版社ホームページの書籍案内には、各章の細項目まで掲載されていますので、お役立てください。本書は、ペプチドの食品、化粧品、ペットフードへの応用を主眼にした類書のないものになったと自負しています。私自身、この書籍の監修作業を通して随分と勉強することができました。産業的な面では知らなかったことも多く、とくに化粧品におけるペプチド利用については新鮮でした。

 なお、ペプチドを対象とした書籍が非常に少ないことに触れましたが、海外では今年末から来年にかけて、食品に関連するペプチドについての書籍4点の刊行が予定されています。ご参考までに、以下に書名等をあげておきます(すでにアマゾン等で予約可能です)。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
186:機能性ペプチドの書籍を監修(2015/04/10)
154:ペットフードの書籍を監修(2013/12/10)
95:ヘビ毒ペプチドでスキンケア!?(2011/06/24)
61:ペプチドと特許(2010/01/25)
53:ペプチドと化粧品(2009/09/28)
46:ペプチドと特定保健用食品(2009/06/10)
10:ペプチドは魅力的なペットフード素材(2007/12/10)
9:コラーゲンとコラーゲンペプチド(2007/11/26)
5:ペプチドは、おいしい!?(2007/09/14)
1:注目される食品成分「ペプチド」(2007/08/22)
ペプチドのトピックス | 15:12 | 2009.08.25 Tuesday |