<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

<< ペプチドの書籍を監修 | main | ペプチドと化粧品 >>

売れないのは誰のせい?

No.52


 半年ほど前(2009/3/25)のこの欄に、「だから売れた!」(No.41)というタイトルがありました。「だから売れた!」は週刊ポストの連載でしたが、「どうして売れなかった?」という連載があってもよいのではということを書きました。それをお読みになった方から、『売れないのは誰のせい?』(山本直人, 新潮新書, ¥680)という本ならありますよ、という情報をいただきました。今回は、この本を含めた5冊の書籍を紹介します。いずれもそれほど高価な書籍ではありませんので、ちょっと気になる方は読まれてはいかがでしょうか。

 「モノが売れない時代」だと言われています。 経済状況の悪さは大きな理由のひとつですが、以前のような「モノの売り方の定石」(広告手法など)が通用しなくなったこともあるようです。 そんな状況を反映して、上にあげたような類の書籍がよく売れています。『 買う気の法則 』(山本直人, アスキー新書, ¥743)は、同じ著者による最近の書籍です。 雑誌などの書評でもよく紹介されており、大型書店では平積みにされています。

 この本の副題は、「広告崩壊時代のマーケティング戦略」であり、主に「広告」と消費者の「買う気」の関係について論じています。新聞やテレビといった「マスメディアの衰退」と「インターネットの普及」が、消費動向に大きな変化をもたらしたようですが、モノを売ることに携わっている方々は本当にたいへんだと思います。

 下にあげたような本を読むと、広告を大きな収入源とする新聞やテレビはいよいよ厳しい状況にあることも感じさせられます。『新聞・TVが消える日』(猪熊健夫, 集英社新書, ¥700)『2011年新聞・テレビ消滅』(佐々木俊尚, 文春新書, ¥750)は、いずれも今年出版されたものです。


 大学業界(?)も「斜陽産業」と言われて久しいのですが、学生が来てくれないことには成り立たない事業です。幸い、私の所属する学部・学科は、まだ堅調な学生募集状況を保っていますが、将来に不安がないわけではありません。「学生が来ないのは誰のせい?」といった状況に陥らない努力をする必要があるのは、モノを売る企業と同じでしょう。


 今後、インターネットを利用した情報発信が、新しいマーケティング戦略の柱になるのは疑いのないところです。私たち大学に所属する研究者も、インターネットによる情報発信を軽視するわけにはいきません。ただ、ついつい後回しになってしまっているのが多くの方の実情かと思います。昨年(2008/4/25)、この欄(No.19「たまご博物館」)で研究室のホームページを開設するつもりであることを書きましたが、のびのびになってしまい、ようやく今年の7月に達成することができました(北里大学食品機能安全学研究室ホームページをご覧ください)。現在、コンテンツの充実に頭をひねっています。

 ところで、先日、『やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術』(島岡要、羊土社、¥2,800)という書籍が出版されました。この本でも、ブログを利用した研究者の「発信力」の必要性が強調されています。なお、著者の島岡要先生は、「ハーバード大学医学部留学・独立日記」という質の高いブログを書かれている方です。


 私は、門川俊明先生(慶應義塾大学医学部)のホームページ「研究留学ネット」で、この本のことを知りました。人気のあるホームページなので、研究関係の仕事をされている方はご存知の方も多いでしょう。門川先生が詳しく紹介されていますので、そちらをお読みになっていただければ、この本の魅力がよくわかると思います。

 研究者の仕事にもビジネスの仕組み(仕事術など)を導入して、効率や効果をあげることの重要性が柱となっている書籍ですが、この考え方はとてもよいことです。ただ、ちょっと抵抗を感じる方もいるかもしれません。これまでにこの種の書籍がなかったのは、そんなことも背景にあるのでしょうが、島岡先生のように多数のビジネス書に目を通し、研究者の世界に導入する努力を本格的にされた方も少なかったのではないでしょうか。島岡先生は、一大決心をして臨床医から基礎研究者となった方です(現在、ハーバード大学医学部 准教授)。自らの経験を交えた研究者の世界におけるビジネス理論の導入は説得力があります。

 この本を読んで、私が共感を覚えたり、感心したりしたところはとても多くありました。ひとつだけ紹介すると、コラム15の冒頭にあった「若いうちに営業・セールスの仕事を1年ぐらい経験しておけば、もっと打たれ強くなれたのに」という言葉があります。


 今回紹介した5冊の書籍のうち、一番のお奨めは最後にあげた『やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術』です。もちろん研究者にとっては非常に有用なものですが、それ以外の方が読んでも役立つ本だと思います。本の帯には、ベストセラーとなった『ウェブ進化論』の著者である梅田望夫氏推薦とあります。門川俊明先生は、1年か2年に1冊くらい登場する「マストバイ」の書籍だとも言われています。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
208:「海の幸」と「陸の幸」のコラボ(2016/03/10)
100:炭酸飲料ブーム(2011/09/12)
72:ロングセラー食品の秘密(2010/07/12)
55:ダンボールの牛と豚(2009/10/26)
54:美味しい非常食(2009/10/09)
41:だから売れた!(2009/03/25)
19:たまご博物館(2008/04/25)
その他のトピックス | 10:45 | 2009.09.11 Friday |