2009.10.09 Friday
美味しい非常食
No.54
最近、海外での大きな地震の報道が続きました。また、この原稿を書いている時点(2009/10/8)では、台風18号の上陸が伝えられています。地震や台風などの災害に備えて、非常食(防災食)を準備されている方もおられると思います。私などの世代ですと、非常食といっても「乾パン」くらいしか頭に浮かばないのですが、最近は、「美味しい非常食」がずいぶん出回っています。9月1日の防災の日の前後には、新聞などでも紹介されて、スーパーに「非常食コーナー」が設けられたりしていました。今回、この「美味しい非常食」を集めてみました。
写真に示したのはいずれも缶詰ですが、レトルトパウチ製品も保存性が高いので、非常食や防災食として販売されています。なお、写真にあげた製品の缶表面には、「保存食」あるいは「保存缶」と記載されています。保存食の缶製品として最初に登場したお菓子は、江崎グリコの「グリコ保存缶」(398円前後)と「ビスコ保存缶」(398円前後)で、2年前のことでした。評判はかなりよく、企業からの大量注文も多いそうです。賞味期限は、グリコ保存缶で3年、ビスコ保存缶で5年です。
「グリコ」も「ビスコ」も久しぶりに食べてみましたが、びっくりするほど美味しく感じられました。避難所などで不安なときに食べたら、ずいぶんと気持ちが癒されるのではないでしょうか。ただ、あまり美味しいと、災害が起こる前に食べてしまうおそれがありますが、非常食も食品ですから、美味しいに越したことはありません。
非常食の定番である乾パンも食べてみましたが、昔から味に変化はないようです。乾パンは保存性に優れた食品だとは思いますが、やはりちょっと美味しさの点では物足りないものがあります。最近の子供たちは柔らかいものばかり食べているので、乾パンの硬さはちょっと厳しいかもしれません。下の写真の製品のように氷砂糖(あるいは金平糖)が入っているものも多いようですが、それだけではちょっと魅力不足です。なお、氷砂糖や金平糖を同梱するのは、糖分補給や唾液を出しやすくする意味もあるそうです。
今年8月に出された缶詰の非常食に、ロッテの「コアラのマーチビスケット<保存缶>」(398円前後)があります。なかなか魅力的なパッケージデザインです。コアラの表情が通常製品よりもやさしくなっているのは、非常食として心憎い配慮です。通常の「コアラのマーチ」は薄いビスケットの中にチョコレートが入っていますが、この保存缶のものはシンプルなビスケットでチョコレートなしです。チョコレートが長期保存に不向きな素材であることや、夏期には溶けてしまうという問題があるようです。
ビスケット類は保存缶製品に向いているのか、他にもいくつかの製品が登場しています。森永製菓の「マリー缶」、ブルボンの「ミルクビスケット」、ヤマザキナビスコの「リッツ缶」といったものがあります。これらの製品は甘味を抑えたものなので、やや大人向きと言えるかもしれません。
最後に正統派非常食といった感じのパッケージデザインを採用している製品を紹介しておきます。ずばり、「非常・携帯用サクマ式ドロップス」と「災害備蓄用パン」です。緊張感のあるネーミングで、こういった食品を買い揃えておけば、防災意識も高まることでしょう。
菓子業界は少子化の影響が大きく、厳しい状況にあると言われています。もしかすると、非常食(保存食)のような新しいジャンルの製品が活路を開くことがあるのかもしれません。カロリーが高めな食品として敬遠されることも多い菓子類ですが、非常時のエネルギー補給には優れた食品です。また、今回紹介したように、缶というのはとても魅力的なパッケージで、店頭にあると思わず手に取ってしまいたくなります。これらの保存缶製品を研究室の学生諸君に見せたときも、非常食という点よりもパッケージデザインに注目していた様子でした。
食品のトピックス | 11:13 | 2009.10.09 Friday |