2009.11.25 Wednesday
佐渡の「へんじんもっこ」
No.57
新潟県佐渡市に、「へんじんもっこ」というソーセージ工房があります。テレビや新聞などでも度々紹介されています。「へんじんもっこ」というのはちょっと奇妙な名前ですが、佐渡の方言で「頑固者」という意味だそうです。このトピックス欄でも、発酵食肉製品(No.23「発酵食肉製品の魅力」)や生ハム(No37「生ハムの国・スペイン」)を取り上げましたが、私は欧州の伝統的な食肉製品に関心を持っています。とくに、日本ではまだ馴染みの薄い発酵食肉製品(発酵ソーセージや生ハム)に注目しています。「へんじんもっこ」は、日本国内では数少ない良質な発酵食肉製品を作っている貴重なソーセージ工房です。先日(2009/11/7)、悲願がかなって、ここを訪れることができました。
代表取締役の渡邊愼一氏(下写真右)には、工場内の案内とたいへんていねいな説明をしていただきました。1981年にソーセージ作りを始められ、今日に至るまでにはずいぶん苦労されたようです。ドイツ製を中心とする使い込まれた製造装置は、手入れがとてもよく深い愛情が感じられました。
「へんじんもっこ」の主力製品はサラミ(下写真)ですが、日本のスーパーでよく売られているものとは似て非なるものです。本来、欧州などのサラミは乳酸発酵により時間をかけて作られる食肉製品ですが、日本で作られているほとんどのサラミは、発酵を経ないシンプルな工程で作られています。ヨーグルトなどの乳製品では乳酸菌を利用した発酵食品は馴染み深いものですが、ぜひ、多くの皆さんに乳酸菌を利用した食肉製品(サラミ)も味わっていただきたいものです。
「へんじんもっこ」のサラミの中で私が一番気に入っているのが、「貴腐サラミ」(下写真)です。原料に混合した乳酸菌に加えて、表面に接種した白カビが豊かな風味をもたらしています。カマンベールチーズのような香りは大きな特徴と言えるでしょう。
研究室の学生諸君にも味わってもらいましたが、たいへん好評でした。感想は様々でしたが、今まで食べていたサラミとはぜんぜん違うことだけは確かなようでした。下の写真は、カビを接種し熟成中の「貴腐サラミ」の様子です。写真では伝わりにくいですが、実に美しい光景でした。
「たまとろサラミ」も特徴ある製品として人気があるそうです。非常に軟らかく、従来のサラミのイメージとはまったく異なる製品ですが、豚肉本来の美味しさが乳酸発酵により引き立っている逸品で、これも他では手に入らない発酵食肉製品です。
その他、「オヤジサラミ」(下写真)など名前も味もユニークなサラミがまだまだあります。詳しくは、「へんじんもっこ」のホームページをご覧になってください。
長い間、プロセスチーズが主体だった日本のチーズ市場も、ナチュラルチーズが増え続け、15年前にプロセスチーズを抜きました。食肉製品においても、ヨーロッパからの本格的な発酵製品(生ハムや発酵ソーセージ)の輸入量が徐々にではありますが増えています。まだ、「へんじんもっこ」のように国内で製造するところは多くありませんが、日本人に受け入れられる発酵食肉製品が数多く誕生していくことを期待しています。
食品のトピックス | 11:24 | 2009.11.25 Wednesday |