2010.01.25 Monday
ペプチドと特許
No.61
これまでこのトピックス欄では、「食品と特許」(No.17, 2008/3/25)や「ペットフードと特許」(No.24, 2008/7/9)で、特許について取り上げてきました。今回は、「ペプチド」に注目して特許の出願状況を眺めることにします。なお、ペプチドはアミノ酸が数個つながったもので、アミノ酸の結合あるいはタンパク質の分解によりできる物質です。
特許庁の特許電子図書館を利用すれば、誰でも手軽に特許情報の検索が行えます(No.24「ペットフードと特許」参照)。表1は、「薬」、「食品」、「化粧品」、「飼料」、「ペットフード」と共に、「ペプチド」をキーワードとして検索した結果です。「出願数」は、特許庁が受け付けた出願書類の件数ですので、内容は問われていないものです。「登録数」は、審査を経て特許として認められたものですから、「新規性」や「進歩性」の伴った「発明」と言えます。
さらに、「ペプチド」と他のキーワードを組み合わせて検索した結果を、表2に示しました。「ペプチド&薬」では特許として登録されたものだけでも3,000件近くありますが、「ペプチド&食品」、「ペプチド&化粧品」、「ペプチド&飼料」、「ペプチド&ペットフード」の特許登録数はかなり絞り込まれており、全件の内容を確認するのもそれほど苦にはならないでしょう。
ここでは、「ペプチド&食品」と「ペプチド&ペットフード」だけ、その内容を紹介することにします。表3は、「ペプチド&食品」の登録特許の内訳です。キーワードとして、「ペプチド」と「食品」を使用していますが、246件の中には関連性の低い余計なものも入っていましたので、171件だけを大まかに分類しています。
予想通り、「保健的機能性」に関するものが多いのですが、「嗜好性」や「物性」に関するものも結構多いことがわかります。保健的機能性の中では、「血圧調節」や「ミネラル(カルシウム、鉄、亜鉛など)吸収」が多く、これは「ペプチドを利用した特定保健用食品」(No.46, 2009/6/10)で紹介した状況と一致しています。なお、特許の「出願人」(権利者)を見ると、味の素株式会社と雪印乳業株式会社がそれぞれ12件となっており、以下、仙味エキス株式会社(10件)、森永乳業株式会社(9件)、不二製油株式会社(7件)、伊藤ハム株式会社(6件)、明治乳業株式会社(6件)と続いています。これらは、ペプチドに関心のある企業と言えるのでしょう。
なお、特許登録されているものは、通常かなりの審査期間を経ているので、上記の246件(171件)は最新のものでも特許出願からすでに5年以上経過しています。最近の研究開発動向を知るには、いささか古い情報かもしれません。特許出願した場合、1年6ヶ月経過すると公開特許公報としてインターネットで閲覧することができます。これらは審査を経ていないものですので、特許として認められるかはわからないものですが、研究開発動向を探るためには役立つでしょう。
表2の「ペプチド&ペットフード」は、出願されたもの全部合わせてわずか37件です。これくらいの数ですと、出願明細書をすべて読むこともできます。「ペプチド」と「ペットフード」のいずれにも関連深いものとして、表4にあげた9件のものがありました。残念ながら、ペットフードについての特許出願状況は、「ペットフードと特許」(No.24, 2008/7/9)で述べたように、数だけでなく質もこれからといった感が否めません。
以前紹介した書籍『機能性ペプチドの最新応用技術 〜食品・化粧品・ペットフードへの展開〜』(有原圭三監修, シーエムシー出版)の第22章には、私どもの研究室の大畑素子助教が執筆した「ペプチドと特許」が掲載されています。食品、化粧品、ペットフードといった領域におけるペプチドに関わる特許が具体例をあげて解説されていますので、そちらもご参照ください。
ペプチドのトピックス | 09:26 | 2010.01.25 Monday |