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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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オルニチンと大人のヨーグルト

No.66


 以前、この欄(No.43「幻のカレーヨーグルト」)で紹介しましたが、私はヨーグルトの容器を集めています。先日(2010/4/6)、「大人のヨーグルト」(小岩井乳業株式会社)という製品が発売になりましたが、家内が近所のスーパーで見つけて買ってきてくれました。赤のパッケージが「朝のグレープフルーツ」、濃紺のものが「夜のバニラ味」となっています。「朝」と「夜」の違いは、どうやら味だけのようです。


 このヨーグルト、なぜ「大人の」ヨーグルトかと言うと「オルニチン」という成分が入っているためです。パッケージには下の写真のような記載があります。オルニチンの説明として「回復系アミノ酸」と書かれています。大人には「回復」が大切なのでしょう。


 上のパッケージ表示に、「キリンの健康プロジェクト『キリンプラス−アイ』」と書かれていますが、キリングループ4社(キリンビール、キリンビバレッジ、小岩井乳業、協和発酵バイオ)が推進しているもので、その第一弾製品として冒頭で紹介した「大人のヨーグルト」を含むオルニチンを使用した5つの食品が開発されました。「仕事やプライベートに忙しい日々を送る30〜40歳台」がメインターゲットとのことです。十和田市内のスーパーマーケットでは、下の写真にある「休む日のAlc.0.00%」、「大人のキリンレモン」、「ウコンダブル」が見つかりました。他に、「Cayu〜na(かゆー菜)」という製品もあるそうです。

 さて、オルニチンという物質ですが、少しだけ解説をしておくことにします。オルニチンはアミノ酸の一種ですが、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸には入っていません(構造は下図)。この点では、以前この欄で取り上げたシトルリン(No.18「シトルリンブームは来るか」)と同様です。なお、アミノ酸については、No.38「グリシンは快眠アミノ酸」にも解説があります。


 体内の有害物質のひとつにアンモニアがありますが、肝臓の重要な役割としてアンモニアの解毒が知られています。食品から摂取したタンパク質はアミノ酸に分解されますが、このときにアンモニアも生成されます。アンモニアは、肝臓の「オルニチンサイクル」で分解されますが、この代謝の主役物質がオルニチンです。このような事実を背景として、オルニチンは「肝臓疲労の回復」というコンセプトの機能性食品に使用されています。通常の食品の中では、シジミが最も多くオルニチンを含んでいます(下表)。シジミは、冷凍するとオルニチン含量が約8倍になることも報告されています。


 オルニチンについて詳しいことをお知りになりたい方は、「オルニチン研究会」というサイトをご覧になるとよいと思います。この研究会は、オルニチン関連製品を扱う企業7社(協和発酵バイオ、キリンホールディングス、永谷園、マルハニチロ食品、ヤクルトヘルスフーズ、カンロ、なとり)が協賛して設立された組織ですが、ホームページではオルニチンがわかりやすく解説されています。

 なお、オルニチンを使用した食品ですが、下の写真に示したようなドリンク類、スープ、サプリメントといったものが、これまでに結構発売されています。オルニチンと同様に肝臓機能の改善作用が知られているウコンを併用した製品が目立ちます(下写真左および右)。

 多くの機能性成分でも言えることではありますが、食品にオルニチンのような物質を添加しても嗜好性が向上するわけではありません。ですから、この種の機能性成分の効果を期待するのであれば、サプリメント(錠剤タイプの食品)のような形の方が、摂取量を確保するのは容易でしょう。これについては、No.39「花粉症と乳酸菌」でも触れましたが、機能性食品を開発している多くの企業にとっては共通した悩ましい問題だと思います。ただ、サプリメントを摂取したくないという方も少なからずおられますので、今回紹介したキリングループの製品群のような形だと、単独製品として開発した食品よりは目的成分を摂取しやすくなることは確かでしょう。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
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60:宇宙を旅したヨーグルト(2010/01/12)
43:幻のカレーヨーグルト(2009/04/27)
39:花粉症と乳酸菌(2009/02/25)
38:グリシンは快眠アミノ酸(2009/02/10)
18:「シトルリン」ブームは来るか(2008/04/11)
食品のトピックス | 20:08 | 2010.04.12 Monday |