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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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世界の市場

No.67


 出張や旅行で海外に出向いたときに、私がまず訪れたい場所は「市場」です。このトピックス欄でも、何回か市場で撮った写真を使いました(No.23「発酵食肉製品の魅力」など)。私の専門領域は、乳・肉・卵といった畜産食品ですので、特にチーズなどの乳製品やハム・ソーセージなどの食肉製品に注目して、市場を訪れます。


 残念ながら最近、以前ほど海外に行く機会が多くなく、ここ2年近くは海外の市場も訪れていません。そんな状況で、最近続けて「世界の市場」に関する書籍が出版されたので、大喜びで手に入れました。まず、1冊目に紹介するのは、昨年秋(2009/9/20)に出版された『図説世界100の市場を歩く』(河出書房, ¥1,800)です。


 この本の著者である森枝卓士氏は、以前、「生ハムの国・スペイン」(No.37, 2009/1/26)で紹介した『食べてはいけない!』という本を書かれた方です。森枝氏は、食文化に関する著書が多いのですが、写真撮影も得意とされており、『デジカメ時代の写真術』(日本放送出版協会, ¥714)という本も書かれています。私もこの本にはお世話になりました。

 『図説世界100の市場を歩く』は、日本経済新聞に連載されていた「市場ふーど記」(2004年5月〜2009年1月, 236回)を厳選して、単行本化したものです。写真中心の本ですので、ぱらぱらと眺めるだけでも楽しめます。私が目を引かれた写真は、「空飛ぶ子豚」で、パリの肉屋さんのユニークなディスプレイでした。また、私の訪れたことのないアジア、南米、アフリカにある国々の市場が多く紹介されているため、興味深く読むことができました。いわゆる先進国でない国の市場は、ちょっと怖い雰囲気があることも多く、落ち着いて写真など撮れないことも経験しています。本ならば、どんな国でも安心です。なお、森枝卓士氏の著書『食べもの記』(福音館書店, ¥3,400)は、大型本なので掲載写真には迫力があります。市場の写真も豊富です。


 ついでにもう1冊、森枝卓士氏の著書『世界の食事おもしろ図鑑 食べて、歩いて、見た食文化』(PHP研究所, ¥2,800)もあげておきます。ふりがなの付いた子供向けの図鑑ですが、魅力的な写真が多いため、大人でも楽しめる本です。


 ちょっと回り道をしてしまいましたが、最近出版された「世界の市場」に関する書籍の2冊目は、その名も『世界の市場』(国書刊行会, ¥1,800)です。今年3月(2010/3)に出たばかりの本です。著者の松岡絵里氏は、『してみたい!世界一周』(情報センター出版局, ¥1,800)という評価の高い本を書かれた方です。


 上の写真は、本の帯をはずして撮ったものですが、帯には、「世界遺産よりおもしろい!パリのマルシェから、ニューヨークの農業市、はたまた南米の魔女市場まで。旅して食べて買って歩いた、世界約100の市場を徹底ガイド。」と書かれています。「ガイド」とあるように、こちらは、最初に紹介した『図説世界100の市場を歩く』よりも、実用性が高いように感じられました。世界各地の市場の地図など、旅行者に有用な情報が記載されていますし、第三章「市場の楽しみ方、歩き方を検証する」は、市場巡り初心者にはかなり有難い記述があります。とくに、「市場歩きの9ヶ条」には、写真撮影の注意など実践的なことが書かれています。これから海外の市場巡りを目指そうという方には、お奨めの一冊です。以前は、『地球の歩き方』といった旅行ガイドのわずかな記述を頼りに海外の市場巡りをしたものでしたので、隔世の感があります。この本には、市場好き著名人3名(女優・鶴田真由さんら)のインタビューも載っています。


 市場の本ではありませんが、知名度の高い書籍を1冊あげておきます。National Geographic社の“Food Journey of a Life Time 500”です。『一生に一度だけの旅 世界の食を愉しむ BEST 500』(日経ナショナルジオグラフィック社, ¥7,429)という日本語翻訳版も昨年暮れ(2009/12)に刊行されています。320ページの書籍に500カ所を掲載していますので、個々の記述はあまり深くありませんが、写真は「さすがナショナルジオグラフィック!」という感じです。この本には、「市場に出かけよう」という章が設けられており、市場ファンも十分に楽しめます。


 最後に、私がお奨めする海外の食料品市場をあげておきます。都市であげると、「食の都」パリは、市場の数も非常に多く、はずすことができません。随所に朝市が立ちますし、巨大な屋根つき市場もいくつかあります。また、他のヨーロッパの都市にある市場では、扱われている食材はローカルなものが中心ですが、パリの市場はヨーロッパ各地のチーズやハム・ソーセージもたくさんあり、品揃えが充実しています。天気を心配しなくてもよい屋根つき市場であれば、サンカンタン市場がよいでしょう。『フランスの食卓が見えてくる パリの朝市ガイド』(文化出版局, ¥1,500)という本は、刊行からすでに9年が過ぎて少し入手困難ですが、パリの市場巡りには必携の書です。朝市だけでなく、屋根つき市場や市場通りがかなりよく網羅されています。


 一方、魅力的な市場のある国としてスペインもはずせません。スペインはハム・ソーセージなどの食肉製品が実に素晴らしい国ですが(No.37「生ハムの国・スペイン」参照)、私がハム・ソーセージといった食肉製品に関心があるということを差し引いても、スペインの市場には多くの方が魅了されると思います。首都マドリッドのセバーダ市場が有名ですが、地中海に面したバルセロナやバレンシアは、魚介類や果物といった食材が豊かな地域でもあり、市場の雰囲気も明るくカラフルな気がします(本稿に掲載した書籍の表紙以外の写真3点は、いずれもバレンシアの中央市場で2005年7月に撮影したものです)。



この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
239:ロシアのスーパーマーケット(2017/06/26)
176:バレンシア中央市場(2014/11/10)
173:インドの食肉事情(2014/09/25)
162:インドネシアの食品市場(2014/04/10)
161:インドネシアの発酵食品(2014/03/29)
151:モンゴルの「赤い食べ物」(2013/10/25)
63:かっぱ橋道具街と食品サンプル(2010/02/26)
37:生ハムの国・スペイン(2009/01/26)
33:ドリアンは臭くない!?(2008/11/25)
23:発酵食肉製品の魅力(2008/06/25)
食品のトピックス | 15:45 | 2010.04.26 Monday |