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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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変な給食

No.69


 『変な給食』(幕内秀夫, ブックマン社, ¥1,330)という本が昨年の暮れ(2009/12)に出版され、テレビや新聞などで頻繁に取り上げられています。たいていの番組や記事では、『変な給食』の主張を支持し、給食のひどい現状を憂えるという論調です。


 まだこの本をお読みになっていない方のために、少しだけ内容を説明しておきます。各地の学校給食を調査した結果から、著者が「変な給食」だと感じた献立73点をすべて写真入りで紹介しています。確かに取り上げられている献立は、どれも伝統的な日本人の食生活からは逸脱しています。「福笑い献立」と命名されたものは、栄養素の摂取基準だけを考えているため、食事としては滅茶苦茶になっているとのことです。この本の最後の方で、新潟県三条市の完全米飯給食の取り組みが紹介されていますが、こちらは毎日の献立も違和感のないものになっています。

 三条市以外でも、質のよい給食の実現のために努力している事例は少なからずあるようです。『給食で育つ賢い子供』(金丸弘美, ソトコト新書, ¥762)という本には、「全国おいしい学校給食マップ」や全国の取り組み38事例が紹介されています。


 『変な給食』を読んだ機会に私も少し学校給食のことを知っておこうと思い、何冊か給食関連本を手に入れて読んで見ました。『吉原ひろこの学校給食食べ歩記3“食べ残し”編』(吉原ひろこ, サテマガ・ビー・アイ, ¥1,524)は、学校給食の食べ歩きをして全国400校近くを訪れた著者が、「食べ残し」に注目してまとめたものです。膨大な調査に基づいた「食べ残しの要因」の分析や「改善策」の提示はかなり具体的なものであり、学校給食関係者には参考になる内容が少なからずあるように思われました。


 『学校給食 食育の期待と食の不安のはざまで』(牧下圭貴, 岩波ブックレット, ¥480)はちょっと硬めの内容ですが、薄い本なので学校給食についての全体的な状況を早く把握するのに役立ちました。最近、重視されている「食育」との関連についても、比較的詳しく書かれています。


 私自身は学校給食に対して、それほど悪い印象は持っていません。私が小学生の頃(昭和42〜48年)、多くの児童にとって学校給食は毎日の楽しみのひとつだったと思います。学校給食で食べるものは家では味わえないものが多かったように記憶しています。母に学校給食のような味のおかずを作ってくれとお願いしたこともありますが、再現は難しかったようです。母の言い分は、「何百人分を大きな鍋で作る味は、家の小さな鍋ではできない」といったことで、私もある程度納得していました。私の兄の時代まで遡ると、悪名高い米国援助物資だった脱脂粉乳の嫌な思い出もあるようで、時代によっても給食に対する印象はずいぶん異なるようです。

 今日のように日本全体が豊かになり、美味しいものが不自由なく手に入る時代では、限られた予算で作る給食が不人気になってきても仕方がないのかなと、なんとなく思っていましたが、あの有名な小泉武夫先生の著書である『不味い!』(新潮文庫, ¥400)に興味深い記述が見つかりました。この本は、「観光地のお膳」から始まって、様々な不味い食べ物が紹介されています。美味しい食べ物を書いた本は多いですが、不味い食べ物だけを紹介している本は非常に珍しいのではないでしょうか。なかなか面白いので、お勧めの1冊です。


 この本では、「不味い学校給食」という章が設けられており、学校給食の嘆かわしい現状が鋭く分析されています。小泉先生は、十数年前、ある小学校で素晴らしく美味しい給食に出会ったそうです。ところが、最近は学校給食がひどく不味くなってしまったとのことです。大きな変化のひとつが、「和食系」から「洋食系」だと指摘していますが、単なる洋食化が進んだのではなく、味が悪い上に軟らか過ぎて噛みごたえのない料理ばかりになったと残念がっておられます。こうなった背景としてO-157の食中毒禍をあげ、学校給食の加熱調理が念入りに行われるようになったことが原因のひとつと推定しています。引用が長くなってしまいますので、この辺にしておきますが、学校給食の変化やその原因をよく考察されています。

 中学校を卒業してしまうと、なかなか給食を食べる機会がなく、給食のことを言われてもピンと来ないという方もおられるかもしれません。そんな方のために、「給食当番」というお店を紹介しておきます。このお店は、東京の新御徒町駅の近くにあります。ひところ、テレビなどでもよく紹介されていたので、東京では結構知名度の高いお店なのかもしれません。懐かしい給食メニューに再会できます。私も3回ほど訪れて、「給食」を食べました。


 私が、学校給食に対して唯一恨めしく思っていることに、「早食い」の習慣がついてしまったことがあります。小学生当時、毎日、級友たちと給食を競って早く食べていました。もちろん、「食育」といった概念も存在しなかった時代で、時々担任の先生がかなり形式的に「よく噛んで食べましょう」などと言っていた程度でした。大人になってから、いかにゆっくり食事をするかに苦心しています。家内と一緒になってからもう20年以上経ちますが、私の食べ終わるまでの早さをずっと非難し続けています。食事を意識してゆっくり食べるのは、かなり困難なことです。
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138:ウンチの本(2013/04/11)
12:食育の大切さを考える(2008/01/09)
食品のトピックス | 11:25 | 2010.05.25 Tuesday |