2010.07.26 Monday
乳酸菌飲料の国際化
No.73
先日、「日本発『乳酸菌飲料』が国際食品規格に」という記事(2010/07/18読売新聞)がありました。代表的な「乳酸菌飲料」として、皆さんよくご存知の「ヤクルト」があります。ヤクルトなどの乳酸菌飲料は、日本で誕生して世界に広まった食品です。
食品の基準を定める政府間組織として「国際食品規格委員会」があります。7月上旬にジュネーブで開催された総会で、日本が提案した「乳酸菌飲料」が食品の新たな国際規格として採択されました。これまで海外では、乳酸菌飲料は「清涼飲料」などに分類されていました。健康に役立つ食品として扱われるようになると、消費税が軽減される国もあり、メーカーにとっては大きなメリットがあります。たとえば、イタリアでは、乳酸菌飲料には付加価値税(日本の消費税に相当)が20%課税されていましたが、今後は10%以下になりそうです。
スーパーの店頭を探してみると、ヤクルト以外にも下の写真にあるような乳酸菌飲料が見つかります。これらの製品には、「乳酸菌飲料」、「乳製品乳酸菌飲料」、「乳製品乳酸菌飲料(殺菌)」と表記されています(詳細は後述)。
ところで、乳酸菌飲料と区別がつきにくいものに、ドリンクタイプの「発酵乳」(いわゆる「飲むヨーグルト」)があります。なお、市販製品のパッケージに「はっ酵乳」という中途半端な表記が用いられているのは、「醗酵」の「醗」の字が当用漢字に入っていないためのようです。個人的には、簡単な漢字を使って「発酵乳」と表記すればよいと思っています。さて、ドリンクタイプの発酵乳ですが、下の写真のようなものが販売されています。
上述の「ヤクルト」は乳酸菌飲料ですが、同じヤクルト本社の製品である「ジョア」や「ミルミル」は発酵乳です。ここで、「乳酸菌飲料」や「発酵乳」の定義を説明しておきます。乳製品を対象とする重要な法令として、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)があります。これによると、「発酵乳」は「乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で醗酵させ、糊状又は液状にしたもの又はこれらを凍結したもの」です。一方、「乳酸菌飲料」は「乳等を乳酸菌又は酵母で醗酵させたものを加工し、又は主要原料とした飲料(発酵乳を除く)」です。重要な点を数字を入れてまとめると、下表のようになります。
ちょっとわかりにくいと思いますが、「無脂乳固形分」8%以上のものが「発酵乳」です。「無脂乳固形分」とは、牛乳から水分と脂肪分を除いた成分(主に、タンパク質と糖質)です。無脂乳固形分3〜8%のものが「乳製品乳酸菌飲料(生菌)」となっており、ここにヤクルトなどが含まれます。また、「殺菌」タイプの乳製品乳酸菌飲料には、「カルピス」があります。なお、無脂乳固形分3%以下のものは、単に「乳酸菌飲料」と表示され、カゴメの「植物性乳酸菌 ラブレ」などの製品が該当します。
話をもっと複雑にしてしまいますが、下の写真にカルピス関連製品を並べてみました。左側の「ザ・プレミアム・カルピス」と「カルピス」は、「乳製品乳酸菌飲料(殺菌)」ですが、中央の「カルピスウォーター」と「カルピス酸乳 アミールS」は「清涼飲料水」です。さらに、右端の「カルピスソーダ」は「炭酸飲料」です。ここまで説明すると、「もうどうでもいい」と言われる方も多いと思いますので、この辺にしておきます。
冒頭で「ヤクルト」を紹介しましたが、1935年に福岡市で販売開始された歴史ある乳製品です。乳酸菌飲料をはじめとするヤクルトの乳製品の1日当たり販売数が、今年6月に初めて3,000万本を突破しました。3,000万本のうち、2,050万本は海外における販売とのことです。今日、アジア・オセアニア、北米、南米、欧州と、世界32の国と地域でヤクルト製品は販売されています。海外旅行先で、ヤクルトを見かける機会が多くなっているのも当然のことです。今回の乳酸菌飲料の国際規格入りにより、海外での市場拡大にさらに弾みがつくことでしょう。
乳酸菌飲料や発酵乳について詳しくお知りになりたい方は、「全国はっ酵乳乳酸菌飲料協会」のホームページをご覧ください。「ヤクルト本社」や「カルピス」といった大手メーカーのホームページにも、有用な情報があります。なお、ヤクルトやカルピスは、前回のトピックスで紹介したロングセラー食品の代表的なものでもあります。
食品のトピックス | 15:50 | 2010.07.26 Monday |