2010.09.10 Friday
ジャージー牛乳とジェラート
No.76
日本で飼育されている乳牛の98〜99%は、皆さんよく御存知の白黒模様の「ホルスタイン」種です。次いで多いのが「ジャージー」種ですが、わずか1%程度です。岡山県の蒜山(ひるぜん)高原周辺は、日本で最もジャージー牛の生産が盛んなところで、日本のジャージーの約1/3が岡山県で飼われています。ジャージーは、イギリス領ジャージー島原産の乳牛で、目の大きいかわいらしい顔も特徴のひとつと言えるでしょう。
ジャージーの牛乳は濃厚で、アイスクリームやバターの原料として優れています。ホルスタインの乳と比べると、下の表に示したように、とくにタンパク質と脂肪の含量がかなり多いことがわかります。
日本ではジャージー牛乳の生産量は少ないものの、その特徴を生かした製品は結構目にします。下の写真のように、「ジャージー」を全面に出したパッケージも少なくありません。ジャージー牛乳に対して、「濃くて美味しい」というイメージをお持ちの方も少なからずおられることでしょう。
なかなか魅力的なジャージー牛乳ですが、日本でジャージー牛の飼育頭数が少ないことには、理由があります。まず、ホルスタイン種は乳量が多く、飲用牛乳の生産には非常に優れた乳牛で、日本の状況には合致しています。また、ホルスタインは肉牛としても優れていて、雄牛を肥育して食肉生産に利用することができます。和牛(黒毛和種)のような霜降り肉は望めないものの、赤肉としては十分な品質のものを生産することができます。一方、ジャージーは残念ながら肉量が少なく、脂肪が黄色い点も牛肉ではマイナス評価となります。ただ、ジャージーの肉は結構美味しいという評価も聞きますので、嗜好性の面で食肉に不向きな品種とは言えないようです。
最近、北里大学獣医学部のある青森県十和田市に隣接する七戸町に、ジャージー牛乳を原料にした手作りジェラート(アイスクリーム)のお店「NAMIKI」がオープンしました。経営している「金子ファーム」さんは、私たち動物資源科学科の卒業生の実家でもあります。牧場内に建てられたジェラートショップは雰囲気がよく、たくさんのお客さんで賑わっています。
このお店のジャージー牛乳を原料とするジェラートの味は、特筆に値するものです。一緒に行った学生諸君も大満足の様子でした。ストロベリー、ブルーベリー、パンプキンなど、11種類のジェラートがありますが、私のお勧めはプレーンな「ジャージーミルク」です。
お店の外には、牛のオブジェなども置いてあり、訪れた人たちの目を楽しませてくれています。冷房の効いた店内でジェラートを食べるのもよいですが、牧場の空気を吸いながら眺めのよい外で味わうジェラートも悪くありません。
現在、NAMIKIのある牧場では、ジャージー牛が6頭飼われていて、そのうちの3頭から牛乳を搾っているとのことです。私が訪れたときは、牛舎の中に3頭(冒頭の写真)、屋外に3頭(写真下)がいました。ジャージーは、その乳が乳製品の原料として優れているだけでなく、愛くるしい容姿も人気があるので、観光資源として魅力ある乳牛です。私たちのキャンパスでも飼えば、学生諸君は喜ぶことでしょう。
NAMIKIのある青森県七戸町は、決して周辺の人口が多いわけでなく、目立った観光資源がある場所でもありません。それでも、NAMIKIのような魅力的なお店にはお客さんが集まるものだと感心させられました。今年12月には、東北新幹線が全線開業し、新駅として「七戸十和田駅」(写真下)も利用できるようになります。「NAMIKI」の評判も、全国的なものになるかもしれません。
今年の夏は異常に暑く、北国の十和田でも連日の猛暑に閉口しました。9月に入っても、まだ暑さが続いているところが多いようです。今回のトピックスは、ちょっとだけ涼しげな内容にしてみましたが、いかがだったでしょうか。
食品のトピックス | 13:39 | 2010.09.10 Friday |