2010.11.10 Wednesday
奥入瀬ガーリックポークと銘柄豚
No.80
青森県は、全国一のニンニク生産地です。その青森県内の市町村で、十和田市はトップの作付面積を誇っています。そんな十和田市で生まれたのが、「奥入瀬ガーリックポーク」です。県産ニンニクを給餌して生産されるこの豚肉は、ビタミンB1とイノシン酸を多く含み、香りや食感も優れていると高く評価されています。
奥入瀬ガーリックポークは、JA、全農あおもり、青森県畜産試験場の連携により誕生した銘柄豚です。ニンニク粉末を配合した独自飼料や給与方法の開発により、一般豚より少し長い200日という飼育期間を経て出荷するスタイルを完成させました。十和田市在住の北里大学 畜産学科(現在の動物資源科学科の前身)の卒業生の皆さんも尽力されました。
1995年に銘柄豚としての販売を開始し、現在では年間約6千頭を出荷しているとのことです。キリンビール「選ぼうニッポンのうまい!2006」の青森県の食材代表に選ばれたり、テレビ番組などで紹介されたりして、今やその知名度は全国的なものになっています。なお、「奥入瀬ガーリックポーク」の「奥入瀬(おいらせ)」は、もちろん十和田湖から流れる美しい「奥入瀬渓流」(下写真)にちなんでいます。
全国各地に「銘柄豚」あるいは「ブランド豚」と呼ばれる豚(豚肉)が数多くあります。しかし、銘柄豚を規定した法律や公的な認定制度はなく、厳密な定義も存在しません。独自ブランドとしての価値を高めるために、それぞれの銘柄豚で飼育方法などに関する厳格な規約の作成、商標取得やマーク作成などが行われています。
「銘柄豚肉ハンドブック'09」(食肉通信社、下写真)には、312銘柄が掲載されています。これらの銘柄豚は、財団法人 日本食肉消費総合センターのホームページにある「銘柄食肉リスト」でもご覧になれます。「かごしま黒豚」や「TOKYO X(トウキョウ・エックス)」など全国的に有名なものもありますが、生産量自体が非常に少ないものも多いようです。
都道府県別に見ると、銘柄豚の種類が最も多いのは北海道(27銘柄)で、以下、群馬と静岡(21)、岩手と宮崎(20)と続いています(下表)。豚肉生産額トップの鹿児島県は11銘柄とさほど多くありませんが、これは「かごしま黒豚」など非常に強力な銘柄(ブランド)が存在するためでしょう。
青森県では、奥入瀬ガーリックポーク以外にも、「奥入瀬の大自然黒豚」(十和田市)、「青森地養豚」(十和田市)、「奥入瀬ハーブポーク」(大畑町)、「川賢のこだわりポークSPF」(三沢市)、「こだわりポーク」(大畑町)、「津軽愛情豚」(田舎館村)、「長谷川の自然熟成豚」(鰺ヶ沢町)、「ヤマザキポーク」(三沢市)、「ガーリック豚」(階上町)、「南部赤豚」(階上町)といった銘柄豚が生産されています。
最近、奥入瀬ガーリックポークなどの地域農産物を材料にした「十和田おいらせ餃子」が評判になっています。「十和田バラ焼き」のような盛り上がりを期待していますが、どうなることでしょうか。私が食べてみた限りでは、かなり美味しい餃子でした。
最後に1冊、銘柄豚関連の書籍として『極上銘柄豚 生産者がすすめる豚肉料理』(チクサン出版社, ¥1,600)を紹介しておきます。残念ながら、奥入瀬ガーリックポークをはじめとする青森県の銘柄豚は取り上げられていませんが、各地の銘柄豚の特色を生かした料理の提案は興味深いものがあります。
食品のトピックス | 11:39 | 2010.11.10 Wednesday |