2011.01.11 Tuesday
『ぶた にく』
No.84
今回のタイトルとなっている『ぶた にく』は、昨年出版された「ドキュメンタリー写真絵本」の書名です。この本は、豚が誕生してから食卓にあがるまでを絵本風に写真で追っています。なお、「ぶたにく」と続けて表記せず、「ぶた」と「にく」の間にスペースが入れてあるのは意味が込められてのことだそうです。
最近、上の写真に写っている学生さんに強く勧められて、私はこの本を購入しました。この学生さんは、本屋で立ち読みをしながら涙してしまったとのことでしたが、私の場合は、感受性が乏しいのかそういうこともなく読み終えました。ただ、難しいテーマを見事な構成で完成度の高い写真絵本に仕上げていることは、私にもわかりました。アマゾンのカスタマーレビューなどを見ると、読者の多くは大切な事実を感動的に伝えている点を評価しているようです。この書籍、昨年暮れに第59回小学館児童出版文化賞を受賞しました。
6年ほど前に出版された『いのちの食べかた』という本は、同様のテーマを文章でわかりやすく伝えています。中学生以上を対象としたシリーズの一冊ですが、ふりがなも付いているので小学生でもじっくり読めば理解できそうです。
数年前に、この本と同名の映画が話題になったので、そちらをご存知の方が多いかもしれません。映画の方は、対象とする生き物(食料)が広範で、家畜(牛、豚、鶏)、野菜、果実、魚と多彩です。映画の原題は、「OUR DAILY BREAD」ですが、邦題を付ける際に、許諾を得て上述の書名を使用したとのことです。テーマには共通性がありますが、両者に直接の関係はありません。私はこの『いのちの食べかた』を映画館で見ましたが、ナレーションや音楽は一切なく非常に淡々と映像が続くのが印象的でした。現在、『いのちの食べかた』のDVD版が入手できます。
DVD版には、『映画 いのちの食べかた ガイドブック』(44ページ)が付録になっています。主要シーンの解説や監督へのインタビューなどが掲載されたなかなか出来のよいものです。すでに映画を見た方も、これから見る方も、このガイドブックは理解の大きな助けとなります。
映像関連では、1985年にNHKで放送された『食と文明の世界像』の第1集『一滴の血も生かす 〜肉〜』も、見ごたえがありました。現在、『人間は何を食べてきたか 第1巻』というDVDの形で入手できます。ドイツの農家の庭先で豚が解体され、血液まであまさず利用する様子は見事です。ヨーロッパの肉食文化の深さを感じさせる映像です。なお、DVDには、番組製作当時のディレクターや映画監督の宮崎 駿氏らによる座談会『肉食にはすべての宗教、文化が詰まっている』の映像も収められています。製作時の裏話や宮崎監督の率直な感想も興味深いものでした。
今回のテーマに関連する書籍は、最近では結構手に入れることができるようになりました(末尾にリスト掲載)。下の写真の『お肉がとどくまで』や『食肉にかかわる仕事』は、子供向けにわかりやすく書かれています。ただ、挿絵、写真、マンガを多用して的確に解説しているので、小学生から大学生まで役立ちそうです。
関連する書籍をもう一冊だけあげるなら、『世界屠畜紀行』がお勧めです。かなりのページ数の本ですが、随所に挿入されている克明なイラストにより、世界各地の状況がリアルにイメージできます。
「生き物」が「食料・食品」になる現場の様子を、多くの消費者が知ることは基本的に大切なことだと思います。ただ、残酷なことはどうしても知りたくないという方もおられるでしょうから、知ることを無理強いする必要はないでしょう。以前は、この種の書籍は非常に少なく、写真や映像を目にする機会も限られていました。知りたい方が必要とする情報を得られるようになった状況は、好ましいことです。
本稿で紹介した書籍(DVD)および他の関連書籍を以下にあげておきますので、ご参考にしてください。
食品のトピックス | 18:04 | 2011.01.11 Tuesday |