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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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乳酸菌・ビフィズス菌と特許

No.86


 乳酸菌やビフィズス菌は、非常によく研究されている食品素材です。研究成果を生かした発酵乳などの特定保健用食品(トクホ)も数多く誕生しています。しかし、新しいコンセプトの食品がトクホとして認められるのはハードルが高いのも事実です。また、食品の場合、トクホ以外は基本的に効果・効能を表示することができません。せめて「特許出願中」とか「特許取得」と表示してアピールしたくなるのも理解できます。下の写真は、いずれも市販ヨーグルトのパッケージの一部分です。


 このトピックス欄では、これまでに「食品と特許」「ペットフードと特許」「ペプチドと特許」と題して、それぞれの領域における特許の状況を紹介してきました。今回は、「乳酸菌・ビフィズス菌」に注目しました。特許庁の特許電子図書館を利用した特許情報の検索については、過去にも述べたので省略しますが、現在では実に手軽に特許情報がインターネットで検索できます。


 表1は、「薬」、「食品」、「化粧品」、「飼料」、「ペットフード」といった大きな領域のキーワードと共に、「乳酸菌」と「ビフィズス菌」を用いて検索した結果です。「出願数」は、特許庁に提出された出願書類の件数ですので、内容については玉石混淆と言ってよいでしょう。一方、「登録数」の方は、審査を経て特許として登録されているものなので、「新規性」と「進歩性」を伴った「発明」です。


 乳酸菌やビフィズス菌の特許状況を調べて気になったのが、表1の右端に示したB/A(%)という数字です。これは、出願数に対する登録数の割合を示したものですが、正確な特許化率を示してはおらず、あくまでも目安です。とは言うものの、乳酸菌やビフィズス菌を扱った特許出願の「本気度」の高さを示しているように思われます。特許出願後、審査請求をすることなく権利が消失するものが少なくありませんし、審査により特許として認められない場合も多くあります。

 参考までに、他の食品関連のキーワードで検索した結果を表2に示しました。「オリゴ糖」など乳酸菌やビフィズス菌に関連するものも高い特許化率を示しています。「大腸菌」や「納豆菌」といった微生物も大きな数字ですが、「ブドウ球菌」はそうでもなく、微生物だから特許化率が高いということでもなさそうです。


 次に、「乳酸菌」と他のキーワードを組み合わせて検索した結果を、表3に示しました。順当に、「乳酸菌&食品」で出願・登録数が多くなっていました。最近は、乳酸菌を利用したペットフードもよく目にしますが、この分野の特許出願・登録数はまだ非常に少ないようです。


 「ビフィズス菌」の場合は、出願数も登録数も「乳酸菌」よりかなり数が少なくなり、検索結果は表4に示したようになりました。ビフィズス菌では、乳酸菌よりは医薬品領域(生菌製剤など)における関心が高いようです。


 表3の「乳酸菌&食品」の登録特許262件の中身を調べてみました。特許の権利をもつ出願人(主に企業)を見ると、表5にあげた企業が上位に並びました。乳業メーカーなど乳酸菌をイメージさせる企業が中心ですが、あまり馴染みのない企業名も入っています。こういったリストは、学生諸君の就職活動にも参考になるかもしれません。どうしても知名度の高い企業に関心が向きがちですが、技術力の高い意外な優良企業が存在することはよくあることです。なお、「ビフィズス菌&食品」(表4)の登録特許33件の中でも、トップは明治乳業でした。乳酸菌やビフィズス菌に関する研究開発に熱心な企業であることがうかがえます。


 「乳酸菌&食品」の登録特許262件を発明内容で分類しようとしましたが、なかなか明確な分類が難しかったこともあり、ここではキーワード検索を行った結果をあげることにしました(表6)。たとえば、トップの「大豆」33件というのは、「乳酸菌&食品&大豆」というキーワード検索をした結果の数字です。特許公報の「要約」と「請求項」を対象として検索しているので、重要なキーワードは含まれていると考えてよいのですが、直接の関連性が低い特許までヒットしていることがあるのは否めません。ただ、おおまかな状況を把握するのには役立つでしょう。


 「大豆」や「豆乳」が上位にリストされたのは、予想していなかった結果でした。目立ったところとして、「免疫(アレルギー)」、「抗菌(バクテリオシン、ロイテリン)」、「γ-アミノ酪酸」、「口腔(虫歯、歯周病)」といった分野があります。また、「香味」が5件となっていますが、嗜好性全般や調味料まで合わせるとかなりの数になります。乳酸菌やビフィズス菌に関連の深い「プロバイオティクス」や「プレバイオティクス」というキーワードでヒットする特許が少なかったのは、ちょっと意外でした。

 これらの上位に登場する特許は、研究開発動向のメジャーな領域のものであり、乳酸菌に関わる仕事に携わっている方々にとってはあまり目新しい情報ではないかもしれません。実は、上位に出てこない特許にこそ、興味深い(珍しい?)ものがあります。今回の場合では、「乳酸菌の催眠活性」、「乳酸菌の脳機能・学習能力・記憶力増強作用」、「乳酸菌を利用した発酵即席麺」といったユニークな内容の特許が見つかりました。さらに言えば、審査を経ていない未請求の出願書類(公開特許公報)の中には、もっと面白いものがあります。検索対象とする件数が膨大になるため、個々の出願明細書の中身までチェックするのは骨が折れますが、研究開発のシーズ探索にはかなり役立ちそうです。



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食品のトピックス | 12:54 | 2011.02.10 Thursday |