2011.05.10 Tuesday
青森シャモロックホームズ
No.92
「青森シャモロック」という鶏をご存知でしょうか。テレビや雑誌などでずいぶん紹介されたので、今や全国的な知名度もかなり高くなったと思います。青森県で開発された鶏で、写真のように美しい容姿です。
この鶏は、20年の開発期間を経て1990年に誕生しました。十和田市に隣接する青森県五戸町にあった青森県畜産試験場(現在は、青森県産業技術センター畜産研究所に改組)による研究成果です。青森シャモロックは、一代雑種と呼ばれる肉用鶏で、横斑シャモ(雄親)と速羽性横斑プリマスロック(雌親)の交配によって生まれます(下図)。したがって、青森シャモロックは親鶏として青森シャモロックを産むことはできません。
青森シャモロックは、肉質や食味がよい肉用鶏として評価されていますが、放し飼いにより一般のブロイラーの2倍の期間をかけて育てられることも重要な要因となっているようです。2001年に宮内庁御料牧場に納められるようになったことや、人気番組「新・どっちの料理ショー」への出演(2006年)などにより、地鶏として全国的な評価を得るようになりました。
さて、今回のタイトルにもなっている「シャモロックホームズ」ですが、これは青森シャモロックを使った肉料理が食べられるお店の名前です。なかなかよいネーミングだと思います。お店は、青森市(写真左)と八戸市(写真右)にあります。今年の1月に、「ぴったんこカン・カン」という番組で安住アナウンサーと森公美子さんが青森店を訪れてシャモロック料理を堪能していたのを、ご覧になった方もいるかと思います。
このお店では、「村越シャモロックパーク」という直営農場で生産された新鮮な鶏肉を使用しています。下の写真にあるように、現在では鳥インフルエンザなどの伝染病予防のために、立ち入りが厳しく制限されています。
先日、私は八戸店で青森シャモロック料理を食べました。水炊き(写真左)もつくね(写真右)も、なかなかのものでした。なお、つくねに付属している卵も、青森シャモロックのものです。せっかくの東北新幹線の全線開業や人気テレビ番組での紹介も、3月の大震災の影響で客足は大きく鈍ってしまっているそうです。
青森シャモロックの肉は、青森県内でもどこのスーパーにも置かれているというものではありませんが、生産地なので比較的入手しやすいようです。鶏肉処理加工施設や販売所も目にします。下の写真は、青森県五戸町にある青森県農産物生産組合のものです。
こういった店舗では、生の鶏肉だけでなく青森シャモロック肉を利用した加工品(燻製やカレーなど、下の写真)も置かれています。青森シャモロックの卵を使用したプリンもありました。
青森シャモロックなどの鶏は、「地鶏」(じどり)と呼ばれています。地鶏は日本農林規格(JAS)によって規定されており、在来種由来の血液百分率が50%以上で出生の証明ができるヒナを用いなければなりません。「在来種」とは、明治時代までに成立あるいは導入され定着した鶏品種です。また、地鶏は飼育期間や飼育方法も規定されています。比内地鶏(秋田)、薩摩地鶏(鹿児島)、名古屋コーチン(愛知)が日本三大地鶏としてよく知られています。近年では、阿波尾鶏(徳島)やみやざき地頭鶏(宮崎)の生産量の伸びが著しく、三大地鶏の地位も安泰ではありません。なお、ちょっとまぎらわしいのですが、「比内鶏」や「薩摩鶏」といった品種は天然記念物であり、地鶏のように食用に供されることはありません。
一方、「銘柄鶏」や「国産銘柄鶏」といった表現も目にすることもあります。地鶏と銘柄鶏を総称して、国産銘柄鶏としていますが、詳しくは社団法人日本食鳥協会による定義[PDF:18KB]をご覧になってください。日本食鳥協会のホームページには、「国産銘柄鶏マップ」も掲載されています。
最後に、鶏に関する書籍を一冊紹介しておきます。『ニワトリ 愛を独り占めにした鳥』(光文社新書, ¥820)です。著者は東京大学総合研究博物館の遠藤秀紀教授で、2010年1月に出版された新しく読みやすい本です。鶏に関心のある方には、お勧めの一冊です。
食品のトピックス | 13:33 | 2011.05.10 Tuesday |