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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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缶詰の日

No.102


 10月10日は「缶詰の日」ということもあり、今回は缶詰についての話題です。1804年にフランスで、金属缶やびんに食物を入れて加熱殺菌するという缶詰の原理が考案されました。この技術により作られた携帯食料は、ナポレオン率いるフランス軍の士気を大いに鼓舞したとのことです。1810年にはイギリスで今日の缶詰に近いブリキ缶が発明され、この技術がアメリカに渡り、広大な国土を背景とした食品工業に発展しました。

 日本では、1871年(明治4年)にフランス人の指導により長崎で鰯(いわし)の油漬缶詰が作られたのが最初と言われています。その後、明治政府の産業振興政策として、1877年(明治10年)に日本初の缶詰工場が北海道にできました。この工場で鮭缶詰が作られたのが10月10日で、「缶詰の日」はこの日にちなんでいます。


 わが国の缶詰・びん詰の生産量は戦後急増しましたが、1990年代中頃をピークに減少に転じました。冷蔵・冷凍技術やレトルト食品の普及といったことが、その背景にはあります。もちろん、缶詰よりも未加熱の生鮮食料品を好む消費者が多いこともあるでしょう。ただ一方で、シーチキンのように缶詰ならではの食材もあります。また、以前、このトピックス欄の「美味しい非常食」で、非常食用の缶詰が多く登場していることを紹介しました。常温で長期保存ができる缶詰の新しい活躍の場だと思います。


 先日、自宅近くの自動販売機に 「ラーメンの缶詰」 と 「うどんの缶詰」 があるのを見つけました。どうして缶詰の中で麺が伸びないのか不思議でしたが、コンニャク麺を使用しているということがわかり納得しました。なんとなく缶詰は古い形態の食品というイメージもありましたが、非常食や麺の缶詰を見ると、まだ新たな可能性がありそうです。

 私が子供の頃(昭和40年代)、缶詰はまだ贅沢品の側面がある食品だったと思います。お中元やお歳暮の定番のひとつでもありました。フルーツやカニの缶詰は贈答品として喜こばれるものでした。最近は、私もフルーツ缶詰を食べることはほとんどなくなりましたが、スーパーの棚を探すと、郷愁を誘うデザインの缶詰が健在です。


 私の専門分野である畜産食品の代表的な缶詰に、「コンビーフ」があります。塩漬けした牛肉を高温高圧処理し、ほぐしてフレーク状にした後に牛脂で固めたものがコンビーフ(corned beef)で、「コン」は粗塩(corn)を意味しています。コンビーフも、最近はあまり口にする機会がなくなりましたが、スーパーの棚には数社の製品が並んでおり、根強い人気があるようです。原料の牛肉が高価なので、牛肉以外の肉(馬肉)を使った「コンミート」(写真右後)も作られています。なお、写真右前の製品は、北里大学の附属牧場(北海道八雲町)で生産された牛肉を原料としたコンビーフです。


 もうひとつ畜産食品の缶詰として昔からあるものに、「牛肉大和煮」があります。「大和煮」は明治時代に千葉県の缶詰業者が考案したもので、缶詰以外ではほとんど目にすることのない調理品です。濃い味付けにより素材の味が消されるため、安価な肉を使うことができる利点もあり、過去には様々な原料肉が使用されていました。


 食品から少し離れますが、缶詰が健闘している製品としてペットフードもあります。いわゆる「猫缶」と呼ばれるウェットフード製品が量販店の棚には大量に並んでいます(下写真)。ただ、猫缶の一部はレトルトパウチの製品に変わりつつあります。軽量なレトルト製品の扱いやすさは魅力があります。なお、食品やペットフードに利用されているスチール缶のリサイクル率は90%近くあり、資源の有効利用の観点からは健闘しています。

 缶詰に関心をお持ちの方のために、書籍を紹介しておきます。『缶詰マニアックス』(タカイチカと缶詰研究会, ロコモーションパブリッシング, ¥1575, 2005/5)は、92種類の缶詰を写真付きで解説した図鑑的な本です。『缶詰博士・黒川勇人の缶詰本』(黒川勇人, 辰巳出版, ¥1050, 2011/10)は、缶詰を使った「缶たんクッキング」のレシピ集です。「缶詰博士」を名乗る著者の黒川勇人氏の「缶詰blog 世界中の缶詰・瓶詰を食べ尽くすぞ!」も、缶詰ファンにはお勧めです。


 『缶詰ラベル博物館』(日本缶詰協会, 東方出版, ¥12600, 2002/5)は、収載されている缶詰ラベルの写真の数に圧倒されます。日本缶詰協会で保存している缶詰ラベルの中から2331点を収載していますが、資料価値の非常に高いものです。「刊行に寄せて」の冒頭に「開封しなければ中身をみることのできない缶詰にとって、ラベルは商品の顔そのもの」とありますが、そのとおりだと思います。


 缶詰に関する情報は、日本缶詰協会のホームページから入手できます。「かんづめハンドブック」「缶・びん詰、レトルトQ&A」などに、かなり詳しい情報が掲載されています。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
199:コンビーフ缶(2015/10/27)
180:牛肉の大和煮缶(2015/01/10)
132:世界にパンを、「救缶鳥」プロジェクト(2013/01/10)
124:食品メーカー発のレシピ本(2012/09/10)
72:ロングセラー食品の秘密(2010/07/12)
54:美味しい非常食(2009/10/09)
食品のトピックス | 11:06 | 2011.10.10 Monday |