2012.02.11 Saturday
食品と商標
No.110
昨年の暮れに、北海道のお土産として人気のある「白い恋人」を製造販売する石屋食品が、吉本興業の関連会社が発売した「面白い恋人」の販売中止を求めて提訴しました。
石屋食品側は、名称が酷似していることが商標法に違反しているという点を提訴理由のひとつとしています。新聞などでは、商標権の侵害を重視すべきという主張の一方で、表現の自由を尊重(パロディーの許容)するという意見も紹介していました。
今回は、この「商標」を取り上げることにします。「商標権」は「特許権」などと共に、「知的所有権」です。ここでは詳細な解説はしませんが、商標とは「ブランド」や「ネーミング」という理解で、大きな問題はないかと思います。企業名、ロゴ、マーク、製品名といったものの多くは、商標として特許庁に登録されています。まず、皆さんがよくご存知の商標の例として、「森永ミルクキャラメル」のパッケージをあげておきます。
1899年(明治32年)に発売されたこのキャラメルは、大ヒット製品となりました。同時に、非常に多くの偽物の登場にも悩まされたそうです。そのため、この製品のパッケージには、登録商標であることがしっかりと表示され、偽物に対しては商標法で対抗しました。有名な「エンゼルマーク」ですが、エンゼルの手には「TM」というアルファベットの組み合わせがあります。これは「Trade Mark」の略で、商標を意味しています。なお、森永のホームページの「ミルクキャラメルの歴史」には、興味深い情報が掲載されています。
企業名やマークの商標は、ほとんどの方が毎日目にしています。商標として登録されていることを、「R」の文字で示している場合も多くあります。これは、「Registered Trade Mark」(登録商標)を意味しています。ただし、この表示が義務付けられているわけではありませんので、「R」がないものでも商標登録されているものが多くあります。有名な企業ロゴ(味の素)とマーク(桃屋)の例を下にあげました。
商標登録されている製品名も多くあります。下には人気ヨーグルトである「森永ビヒダス」と「明治プロビオ」のものをあげました。スーパーの店頭にある食品にも、「R」マークが付いたものが簡単に見つかりますので、ぜひ探してみてください。
商標として登録されるためには、特許庁に出願して審査を受ける必要があります。しかし、同じ知的所有権である特許の場合に比べると、書類の記載内容は簡単なものであり、個人でも出願の対応ができるものです。既存の登録がないなどの特許庁による審査が通ると、めでたく商標として登録され、下に示したような「商標登録証」が送られてきます。この商標登録証は、私たちが設立した大学発ベンチャー「株式会社フード・ペプタイド」の社名である「フード・ペプタイド」のものです。これ以外にも、英語標記の「Food Peptide Co., Ltd.」を商標登録しています。
実際に商標の登録を考える場合は、特許事務所に相談したり、下にあげたような書籍をお読みになるのがよいと思います。また、初心者には少し親しみにくいですが、特許庁のホームページにも「商標について」というページがあります。
すぐには商標登録する予定はないけれども、もう少し商標について知りたいという方には、下にあげた 『へんな商標?』 という2冊がお勧めでです。 多くの商標事例を通して、楽しく商標を理解することができます。 冒頭で紹介した「面白い恋人」も載っていますが、これは特許庁の審査で拒絶査定が確定し、商標として登録されなかったそうです。
食品において製品名などの商標は、かなり大きな意味を持っています。単純に比較することはできませんが、場合によっては特許よりも重要な知的所有権となりうるものです。私のように大学にいる人間にとっては、知的所有権として重要なものは特許権だけだと思っていました。このため、数年前までは商標権などまったく無縁の存在でした。しかし、大学発ベンチャー以外でも、北里大学附属牧場(北海道八雲牧場)で生産している牛肉の商標として「北里八雲」が登録されるなど、大学においても商標権が重要な役割を持つようになってきています。
食品のトピックス | 11:18 | 2012.02.11 Saturday |