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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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変色しないリンゴ

No.112


 先日、近所のコンビニエンスストアで「あ!ぷる」なる製品を見つけました。リンゴの産地である青森県弘前市の「有限会社 増田屋袋店」という比較的小さな企業が、青森県工業総合研究センターとの共同研究により開発したとのことです。


 名前のとおりの製品で、パッケージの中にはカットしたリンゴが3切れ入っています。パッケージには「シャリシャリ感ながもち」と書いてありますが、実際、味や食感は新鮮なリンゴそのもので、少々驚きました。


 リンゴと言うと、皮を剥くとすぐに色が悪くなる果物という印象をお持ちの方も多いと思います。品種によっても違いがありますが、切り口をしばらく放置しておくと、下の写真のように茶色くなってしまいます。


 リンゴなどの果実の切り口が変色するのは、クロロゲン酸などのポリフェノール類が酵素(ポリフェノール酸化酵素)により酸化して褐色物質が生成するためです。ポリフェノールとポリフェノール酸化酵素は、リンゴの細胞内の異なる場所に存在しますが、カットすることによりお互いに接触します。さらに空気にさらされることにより、酸化反応が始まります。モモのように変色の早い果物と、ナシのようにそうでもない果物がありますが、その違いはポリフェノールや酵素の量の差と言ってよいようです。


 この変色反応を防ぐには、加熱して酵素を失活させるのが効果的ですが、果物のフレッシュな食感が失われてしまいます。この酵素の働きを阻害する物質として、食塩があります。昔から、切ったリンゴを塩水に浸すことが行なわれてきましたが、これはポリフェノール酸化酵素の活性を阻害するためということになります。ただ、この方法はリンゴに塩味がついてしまうという欠点があります。


 「あ!ぷる」の製造工程を見ると、カットしたリンゴを、ビタミンC・茶抽出物・リンゴ抽出物からなる溶液に漬けて脱酸素剤とともにパッケージにガス充填するというシンプルなものです。ビタミンC、カテキン(茶抽出物)、ポリフェノール(リンゴ抽出物)という抗酸化作用のある物質が変色を抑えています。購入した「あ!ぷる」を冷蔵庫で保存したところ、2週間後もほとんど変色しませんでした。開封後はゆっくりと変色するので、ガス充填やパッケージに同梱されている脱酸素剤の役割も重要なようです。


 「あ!ぷる」は1袋150円ほどで売られています。リンゴ3切れとしては若干高めなものですが、リンゴという果物の弱点を克服した点は高く評価できます。皮を剥く面倒や変色の心配がないリンゴというのは魅力的です。


 高校のときの英語の授業で、"An apple a day keeps the doctor away"(1日1個のリンゴで医者いらず)という諺を習った方は多いことでしょう。いまだに私も、リンゴを見るたびにこの諺を思い出します。青森県にいることもあって、弘前大学を中心とするリンゴの保健的機能性に関する話に接する機会が多くあり、いつしかあの諺は本当だったのかなと思うようになりました。また、先日、下にあげた『林檎の力』という本を読みましたが、アップルペクチンには、体外にセシウムを排出する作用があるとのことです。興味のある方はお読みになってみてください。


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