2012.04.25 Wednesday
カタツムリ・ナマコ・キャビア
No.115
以前、「ヘビ毒ペプチドでスキンケア!?」で、化粧品に使用されているヘビ毒由来のペプチド(正確には合成ペプチド誘導体)について紹介しました。最近、量販店の店頭には、毒ヘビ以外でもちょっと変わった生物原料を配合した化粧品が並んでいます。「生物多様性コスメ」などと称している場合もあります。今回は、カタツムリ、ナマコ、キャビアといった原料を利用した化粧品に注目してみました(下の写真は、左から順に、カタツムリ、ナマコ、キャビアを利用した製品)。
まずは、カタツムリです。カタツムリのネバネバ成分は傷を修復する作用があり、自身の殻や体が損傷を受けても直ちに修復してしまうとのことです。カタツムリ(エスカルゴ)を養殖している人たちは、手などの傷がかなり速く治癒してしまうそうです。似たような話は、八丈島などで「くさや」を作っている人たちの間でもあります。カタツムリ分泌液を配合したモイスチャークリームのPOPには、「カタツムリ養殖場で働く人の手は美しい!」と書かれています。
カタツムリのネバネバ(分泌液)には、コラーゲン、エラスチン、グリコール酸、コンドロイチン、アラントインといった成分が含まれているとのことです。これらの中でアラントインという物質は、ちょっと耳慣れないものではないでしょうか。アラントインは、広く動植物に存在し、傷の修復や皮膚の形成を促進する作用があることから、化粧品や医薬品の原料として利用されている物質です(下図はアラントインの構造式)。
次に、ナマコです。ナマコの体壁タンパク質の70%はコラーゲンから構成され、サポニンやセラミドといった成分を比較的多く含んでいます。サポニンは、石鹸のような発泡作用をもつ物質で洗浄効果があり、石鹸やシャンプーによく利用されています。コラーゲンやセラミドも保湿作用があるので、ナマコ抽出液は石鹸や化粧品素材として優れていると言えるのかもしれません。なお、ナマコサポニンは防カビ効果が報告されており、白癬菌を原因とする水虫の治療薬(ホロクリンS)も開発されています。
最後に、キャビアです。キャビアエキスを配合したモイスチャークリームのパッケージには、「しっとりとキメ細やかな肌へと導く、贅沢な質感のクリーム」などと書かれています。キャビアは魚卵ですから、タンパク質、ビタミン、ミネラルをはじめとする豊富な栄養成分が含まれています。また、キャビアに多い成分のひとつに、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。DHAは記憶力や集中力を高める物質としてよく知られていますが、最近ではアンチエイジング(抗老化)作用も注目されています。インターネット上の広告には、「キャビア化粧品を利用すると肌のハリと弾力がよみがえり肌が若返る」などとありますが、お肌の状態が気になる方には魅力的なフレーズでしょう。
私は化粧品についてはあまり詳しくありませんが、食品のように経口的に摂取するものではないので、これまでは食品ほど安全性について心配する必要はないのかとも思っていました。しかし、最近、小麦タンパク質の分解物を配合した石鹸の使用が原因で深刻なアレルギー被害が発生しており、大きく考えが変わりました。
今回紹介したカタツムリ、ナマコ、キャビアといったものは、私は最初ちょっと怪しい化粧品素材という印象をもっていましたが、調べてみるとそれなりの根拠があるように感じられました。安全性が十分に確保されていれば、この種の素材を利用した製品は面白いと思います。
その他のトピックス | 09:12 | 2012.04.25 Wednesday |