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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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拡大するノンアルコール飲料市場

No.116


 近年、ノンアルコール飲料の人気が高まり、市場規模が急拡大しています。スーパーには、この種の飲料を並ぶ棚が設置され、すでに一つのカテゴリーとして定着した感があります。近所のスーパーでも、下の写真にあげた製品を手に入れることができました。

 もちろん中心となる製品は、ノンアルコールビールテイスト飲料(以下、ノンアルコールビール)です。2011年の国内出荷数量は2,830万ケース(1ケース = 250ml x 24本)に達し、今後も拡大が見込まれています(グラフ参照)。


ところで、このノンアルコールビール、どのように製造されるものかご存知でしょうか。私もごく最近までよくわかっていませんでしたが、先日、食品製造学という講義の準備をする際に知ることができました。大きく分けると、3種類の製法があるとのことです。すなわち、①通常のビールを製造しアルコールを除去する、②麦汁や香料などを調合してビール味を作り出し炭酸を入れる、③ビールを製造する際に酵母によるアルコール発酵を抑える、といったものです。


 ①の製法は、比較的古くからあるドイツのノンアルコールビール「アインベッカー」などで採用されているものです。通常のビールよりも手間がかかるため、ビールよりもコストを要する飲料になってしまいます。アルコール除去をするためには、膜分離という方法が利用されています。②の製法で作られるものは、ビール味の飲料という感じですが、コスト的にはすぐれています。現在、日本で製造販売されているノンアルコールビールの多くはこの方法を採用しています。また、一部の製品では、より本物のビールに近い風味を得るために、③の製法が導入されています。


 2009年に発売された「キリンフリー」は、ノンアルコールビール市場を確立させるのに大きく貢献した製品です。②の製法で作られる製品ですが、最近のリニューアルにより麦芽100%の麦汁の利用と共に、人工甘味料や合成香料を不使用とし、より自然な美味しさを実現したそうです。一方で、「アサヒドライゼロ」は麦汁をまったく使用しないという思い切った発想で、余分な甘味や雑味を抑えつつビールの味を再現した製品です。

 ノンアルコールビールの市場拡大を受け、チューハイ、梅酒、ワインなどでもノンアルコール飲料が登場しています。日本酒や焼酎といったアルコール含量の高い酒類の場合、当然ノンアルコールにすると本来の大きな特徴が損なわれてしまいます。しかし、昨年発売された鹿児島・小正醸造の芋焼酎テイスト飲料「小鶴ゼロ」は、世界初のノンアルコール焼酎として評判になり、好調な販売成績をあげているそうです。


 ところで、ノンアルコール飲料を飲むと、アルコール分がないにもかかわらず気分が高揚するという話をときどき耳にします。あるビールメーカーでは、社内の会議を盛り上げるためにノンアルコールビールを出すことがあるそうです。こういう話を聞くと、ノンアルコール飲料を飲んで車の運転をしても大丈夫なのかと心配になります。この点については、最近の雑誌記事(アエラ 2012/4/30号)に安心させる内容が書かれていました。この種の飲料を摂った場合、ドーパミンの分泌による興奮がもたらされることがあっても、判断力や反射神経に悪影響を及ぼすことはなさそうです。ビールメーカー各社も十分な検討を行っており、キリンビールは「キリンフリー」の発売前に警察庁科学警察研究所の協力のもとにドライビングシミュレーターによる検証を行ったとのことです。

 1969年にサッポロビールが発売した「サッポロライト」というノンアルコールビールの走りとも言える飲料がありました。私はその当時小学生でしたが、かなり大々的にTVCMが流れれていたことをよく記憶しています。しかし、この製品は市場に定着することなく消えました。近年、ノンアルコール飲料が急速に市場拡大した背景のひとつとして、2002年の道路交通法改正に伴う飲酒運転の厳罰化がよくあげられています。実際に、これを機に各社がノンアルコールを市場に投入しました。当初は車の運転などのためにアルコールを摂れないときの代替品という性格の強い飲料でしたが、最近では新しいタイプの清涼飲料として消費層が拡大しているとのことです。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
192:ビールでも機能性食品(2015/07/10)
109:玉子酒と粉末酒(2012/01/25)
72:ロングセラー食品の秘密(2010/07/12)
49:ゼロ飲料・ゼロ食品(2009/07/27)
食品のトピックス | 17:48 | 2012.05.10 Thursday |