<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

<< 不凍タンパク質と食品 | main | 甘い牛乳 >>

アルガトリウムとオメガ3脂肪酸

No.118


 最近、「アルガトリウム」という素材がちょっと評判になっているようで、雑誌などでもときどき目にします。「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる成分を含む素材で、日本でもいくつかのサプリメントや化粧品に利用されているようです(たとえば下の写真の明治「アミノコラーゲン」)。

 上の製品のパッケージには、下のような記載があります。最初にアルガトリウム(Algatrium)という名前を聞いたときは、化学物質名かと思いましたが、スペインの企業(Brudy Technology社)の登録商標(製品名)でした。マグロから抽出して得られる天然素材で、パッケージの原材料名には、「DHA含有精製魚油」と表示されています。

 アルガトリウムの有効成分である「オメガ3脂肪酸」ですが、有名なDHA(ドコサヘキサエン酸, Docosahexaenoic acid)がこのひとつです。下に示したような化学構造で、オメガ3(ω-3)という位置に二重結合を持つ「不飽和脂肪酸」です。アルガトリウムには、DHAが70%以上含まれているそうです。ひところ、DHAは「頭がよくなる」物質としてかなり注目され、これを多く含むマグロの目玉の周りの部分が珍重されたこともありました。


 たしかにDHAが不足すると脳の活動が低下しますが、大量に摂取しても学力が目に見えて向上するようなことはないようです。だからと言って、DHAをはじめとするオメガ3脂肪酸を摂取する意義がないわけではなく、体内では合成されない必須脂肪酸なので、食物から摂取する必要があります。DHAは脳神経系の働きに関与するのは確かなようで、乳幼児の視力発達や高齢者の認知症改善といった作用も報告されています。

 EPA(エイコサペンタエン酸, Eicosapentaenoic acid)もオメガ3脂肪酸のひとつで、アルガトリウムにも6%程度含まれています。EPAはDHAと違って脳に到達できないため、循環器系における働きが主であると考えられています。EPAの摂取により、中性脂肪値の低下、心筋梗塞や血栓症の予防などが期待でき、医薬品にも利用されています。下の写真は、同じメーカーのDHAとEPAを利用したサプリメントですが、前者はパッケージに「受験生や実年世代の方に」とあり、後者は「サラサラ成分を摂りたい方に」とあります。

 ところで、必須脂肪酸には、オメガ3脂肪酸の他に「オメガ6脂肪酸」があります。下の写真のパッケージは、何年か前にスペインを訪れたときにスーパーで見つけた鶏卵のものです。この「オメガ卵」は、産卵鳥にオメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸を含む餌を与えて生産されたもので、両者を多く含んだ鶏卵となっています。ただ、オメガ6脂肪酸は通常の食生活で不足することはあまりなく、多くの日本人は積極的に摂取する必要はなさそうです。オメガ6脂肪酸の過剰摂取は生活習慣病の原因になると言われているので、むしろ摂取のし過ぎに注意した方がよいかもしれません。


 DHAやEPAといったオメガ3脂肪酸は、イワシ、マグロ、サバ、カツオ、サンマといった魚の脂に多く含まれています。魚を多く食べるイヌイットの人たちには、心臓病が少ないという有名な調査結果もあります。以前は日本人も魚を多く食べていましたが、現在ではだいぶ少なくなってしまいました。魚をほとんど食べないという方は、DHAやEPAを含むサプリメントを摂取するのもよいでしょう。なお、DHAやEPAといったオメガ3脂肪酸は、美容系サプリメントや化粧品にもよく利用されているので、その方面での効果も期待できるのかもしれません。
この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
99:ポテトチップスとトランス脂肪酸(2011/08/26)
食品のトピックス | 11:36 | 2012.06.11 Monday |