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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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食品の「国産」表示

No.121


 最近、下の写真にあげたポテトチップスが登場しました。使用されているジャガイモ、塩、油がすべて国産のもので、「純国産」(100%国産)がセールスポイントとなっています。

 日本国内で生産された食品を望む消費者は多いようで「国産」を強調した食品が多くあります。この種のパッケージは下の例のように冷凍食品などではよく目にします。


 法律的なことを説明すると、食品の原産地表示はJAS法によりすべての生鮮食品(農産物、畜産物、水産物)で義務付けられています。一方、加工食品の場合は複雑で、原料の原産地だけでなく、加工された場所も新たな「産地」として関係してきます。JAS法に基づく「加工食品品質表示基準」は、22の食品群と4品目で原料原産地の表示を義務付けています。また、輸入した加工食品はすべて原産国名の表示しなくてはなりません。


 上に示した「キューちゃん」の場合、きゅうりは輸入原料ですが、しょうがやゴーヤは国産のもので、国内工場で加工・包装しています。この表示は説明的で分かりやすいですが、下のメープルシロップの例などは、ちょっと混乱するかもしれません。カナダケベック州採取のメープルシロップを原料としていますが、日本国内で充填されているため国産となっています。このように、説明なしで「国産」と表示されている食品が多いようです。


 チョコレートのように、個別の規則が適用されるものもあります。「チョコレート利用食品の表示に関する公正競争規約」では、輸入品と紛らわしい国産品にあっては、国内製造品である旨を表示することになっています。下のような国産チョコレートは多くの輸入原料から作られていますが、原料の部分の表示義務はありません。


 また、「不当景品類及び不当表示防止法」に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」という法律では、国産であるのに外国産に誤認されるおそれのある場合に国産表示を義務付けています。缶コーヒーや清涼飲料の原産国は、缶やペットボトルに充填された国なので、缶コーヒーには「国産」と書かれたものが多くあります。


 以前、「口蹄疫と和牛肉」(2010/8/10)で、「和牛」とまぎらわしく誤解されることが多い「国産牛」について書きました。日本で生まれた和牛以外の牛や、外国種や輸入種でも3か月以上国内で肥育された牛は、国産牛になります。実際に精肉売り場に行くと、「和牛」と「国産牛」だけでなく「国産和牛」という表示もあり、慣れない方にはわかりにくい表示かもしれません。


 ところで、犬や猫に与えるペットフードにも、「国産」表示が目立ちます。ペットフード安全法の施行により、賞味期限や原材料名などと共に、原産国名も表示義務化されました。国産表示がされているペットフードは、日本国内で製造されたものですが、使用されている原材料の原産地表示までは義務化されていません。


 先日の新聞記事(2012年7月21日付けの各紙)によると、現在、複雑に規定されている食品の「表示基準」を、新たな法律に一元化する新制度の方向が固まったとのことです。食品の表示には、主に3つの法律(JAS法、食品衛生法、健康増進法)が関わっていますが、かなり難解なものとなっています。新しい制度では、原産地表示を含めてわかりやすい表示の実現が望まれます。最後に、食品表示の入門書として、『新版食品表示検定 認定テキスト・初級』(ダイヤモンド社, ¥1575, 2012/1)をあげておきます。



この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
274:和牛とWAGYU(2018/12/10)
210:TPPと牛乳・乳製品(2016/04/11)
206:TPPと牛肉・豚肉(2016/02/10)
141:6次産業化とレストラン「NARABI」(2013/05/27)
104:TPPと食の安全・安心(2011/11/11)
78:もも肉でもロース(2010/10/12)
74:口蹄疫と和牛肉(2010/08/10)
食品のトピックス | 09:35 | 2012.07.25 Wednesday |