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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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セラミドと美肌食品

No.126


 セラミドは、皮膚の角質層に多く含まれている物質で、皮膚からの水分蒸発を防いでいます。角質層は細胞がレンガを積み重ねたような構造をしていて、レンガの間を埋めるセメントの役割を担っているのがセラミドです(下図参照)。セラミドの保湿効果を期待した化粧品はかなり前からありましたが、セラミドの内服効果が示されてからは、サプリメントなどの食品にも利用されています。


 以前は、化粧品などに牛脳由来のガラクトシルセラミドがよく利用されていましたが、BSE発生以降は使われていません。これに代わって、植物由来のグルコシルセラミドが主流となりました。コメ、コムギ、コンニャク、トウモロコシ、ダイズなどから調製されたグルコシルセラミドが、素材メーカーから供給されています。先日、訪れる機会があった「食品開発展2012」(下写真)でも、多くのメーカーがセラミド素材を紹介していました。


 下の写真のように、セラミドを全面に出した食品(サプリメント)が多くなっており、消費者にもだいぶ浸透してきているようです。写真の製品は、いずれもコメ由来のセラミドを使用しています。セラミドを経口的に摂取すると、皮膚の保湿能が向上するという報告が多く見られますが、セラミドが角質層に直接移行するわけではありません。


 少し難しい話になってしまいますが、セラミドという物質の構造について触れておきます。セラミドは脂質の一種で、食品などによく用いられているグルコシルセラミドの構造は下に示したようなものです。経口摂取したグルコシルセラミドは、グルコース部分が切れてセラミドになり、さらに分解されて脂肪酸とスフィンゴイド塩となります。これらの物質がセラミドの再合成に寄与していると推定されていますが、まだ検討の余地があるようです。


 食品に利用されているセラミドは植物由来のものが多いのですが、雪印メグミルクは、牛乳由来の「ミルクセラミド」を製品化しています。その特徴のひとつとして、セラミドの前駆体であるスフィンゴミエリンを高含有していることがあげられています。ミルクセラミドを摂取したマウスは、角質層のセラミド量が増加することが示されていますが、セラミド合成に利用されやすい前駆体が存在するためかもしれません。


 昨年11月に、資生堂はグルコシルセラミドを添加した清涼飲料水を特定保健用食品(トクホ)として消費者庁に申請しました。「肌が乾燥しがちな方に適する旨を特定の保健の用途とする食品」とのことです。現在、審査が進められているようですが、これまでになかった「美肌トクホ」とも言えるカテゴリーのものであり、関係者の注目を集めています。


 いわゆる美肌(美容)食品に利用されている機能性成分は多く、この欄でも、コラーゲン、グルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどを紹介してきました。美肌食品の中から、トクホの表示許可を得るものが出てくると、状況も大きく変わるかもしれません。イメージでこの種の製品を評価する消費者が多い現状に、少なくとも一石を投じることになるでしょう。

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240:機能性表示食品が続々登場(2017/07/10)
192:ビールでも機能性食品(2015/07/10)
164:希少糖と食品(2014/05/12)
120:プロテオグリカンと弘前大学(2012/07/10)
115:カタツムリ・ナマコ・キャビア(2012/04/25)
103:グルコサミン・ヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸(2011/10/25)
58:「消費者庁許可」特定保健用食品の行方(2009/12/11)
53:ペプチドと化粧品(2009/09/28)
25:アスタキサンチンと化粧品(2008/07/25)
9:コラーゲンとコラーゲンペプチド(2007/11/26)
食品のトピックス | 11:09 | 2012.10.10 Wednesday |