<< July 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

<< ナノブロックで作る動物 | main | ちょっと贅沢なヨーグルト >>

食物アレルギー対応食品

No.128


 先日、「非常時でも安心して食べられる特定アレルゲン不使用の保存食・食物アレルギーの方に配慮した非常食セット」というかなり長い名前の商品を見つけました(下写真)。セットの中には、ひじきご飯、きのこご飯、えいようかん(羊羹)、ミネラルウォーター、ヒートパック、マスク2枚が入っていました。物流の悪化する非常時には、この種の商品を入手するのも困難になるでしょうから、必要とされる方は備えておく必要があります。今回は、「食物アレルギー対応食品」を取り上げることにします。


 食物アレルギー対応食品の厳密な定義は見当たりませんが、特定のアレルゲンを除去した食品やアレルゲンを含む原料を使用していない食品を指すことが多いようです。資生堂の「ファインライス」という製品は、米アレルギーの原因となるタンパク質「グロブリン」を分解除去したもので、米アレルギーに悩む方々に大きな貢献をしました。この製品は、1993年に第1号の特定保健用食品として許可を受け、その後、特別用途食品(病者用食品)となりましたが、残念ながら2007年に販売終了となっています。現在、米のアルブミンやグロブリンを分解除去した「Aカットごはん」(越後製菓)などが入手できます。


 日本ハムの「アピライト」シリーズは、「アレルゲン除去食品」の表示許可を得た製品でした。食肉製品は食物アレルギーを起こしにくい食品ですが、副原料として使用される卵・牛乳・穀物由来のタンパク質がアレルゲンとなることがよくあります。アピライトは、これらの原料をまったく使用せずに作られていました。


 アピライトシリーズもすでに販売終了となりましたが、これに代わる製品として「みんなの食卓」シリーズが販売されています。後述の7品目(乳、卵、小麦、そば、落花生、えび、かに)を一切含まない食肉製品ですが、通常の食品としてスーパーの店頭に並べられています。なお、日本ハムは、「食物アレルギーネット」というウェブサイトを立ち上げ、食物アレルギーについての情報発信に力を入れています。


 現在、消費者庁が許可する特別用途食品の一種(病者用食品)である「アレルゲン除去食品」として、6製品が表示許可を得ています。いずれも母乳代替食品で、牛乳アレルギーのために通常の牛乳タンパク質を含む調製粉乳を摂取できない乳児向けの製品です。そのひとつに、森永乳業の「乳たんぱく質消化調製粉末 MA・mi(エムエー・ミー)」があります。この製品では、酵素消化と膜濾過により牛乳タンパク質のアレルゲン性を著しく低減させています。


 ところで、平成14年に加工食品のアレルギー表示制度がスタートしました。現在、食品衛生法では、加工食品にアレルギー物質が含まれる場合には、それを表示することを義務付けています。アレルギー発症件数の多い「卵」、「乳」、「小麦」、「えび」、「かに」の5品目と、症状が重篤な「そば」と「落花生」の合わせて7品目が表示義務の対象となっています。また、「あわび」や「いか」など18品目が表示奨励をされています(任意表示)。下に示した表示例(日清マグヌードル)では、これら25品目を見やすい一覧表にしています。


 現在、加工食品におけるアレルギー物質の表示方法は、メーカーや製品カテゴリーによってかなり異なっています。冷凍食品のように比較的パッケージサイズの大きなものは、目立つ表示がされています。下の2つの例は、いずれも冷凍食品です。


 また、アレルギー表示の重要性が高いと考えられるベビーフード関係も、表示に工夫されたものが多いようです。下の表示例は、いずれも「生後9か月頃から」を対象とした米飯類(左)とスナック菓子(右)のものです。


 いわゆる食物アレルギー対応食品には、上述したようなアレルゲンの使用を避けたもの以外に、アレルギーの予防や症状軽減に役立つものも含まれるようです。以前にこの欄で紹介したヨーグルトのような乳酸菌やビフィズス菌を利用した発酵乳も注目されているもののひとつです。食品に含まれる成分でアレルギーに有効な可能性のあるものは多く報告されていますが、まずアレルギーそのものについての正しい知識を持って対応することも大切です。下にあげた書籍2点は、食物アレルギーを含むアレルギーの入門書としてお勧めです。とくに右の『アレルギーのふしぎ』は、カラー図版も多く読みやすい内容です。


 食物アレルギー対応食品で考えなければならない大切な問題に、嗜好性もあります。 アレルゲンとなるタンパク質を分解すると、好ましくない風味を与えるペプチドやアミノ酸も生成します。 また、本来使用すべき鶏卵や牛乳といった原料を使わずに、美味しいものを作るのも困難です。 家庭で、食物アレルギーに対応したメニューを用意する場合も、かなりの工夫が必要で、下にあげたようなレシピ本もいくつか出されています。



この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
192:ビールでも機能性食品(2015/07/10)
160:食べて治す食物アレルギー(2014/03/10)
159:花粉の季節が到来(2014/02/25)
158:血液型と食事(2014/02/11)
113:ラクトフェリンは多機能タンパク質(2012/03/26)
101:山羊乳の魅力(2011/09/26)
40:たたかう初乳(2009/03/10)
39:花粉症と乳酸菌(2009/02/25)
食品のトピックス | 16:02 | 2012.11.12 Monday |