<< October 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

<< 世界にパンを、「救缶鳥」プロジェクト | main | 動物の立体パズル >>

インフルエンザとツバメの巣

No.133


 先日、大型薬局店のレジ近くに置いてあった「のど飴」を値札を見ずにレジに持っていったところ、示された千円近い値段に動揺しました。


 この「インフルバスターのど飴」という製品、いかにもインフルエンザの予防に役立ちそうなネーミングですが、食品なので具体的な効果・効能については表示されていません。パッケージの下方には、「機能性乳酸菌」、「北の森が育てたキノコの力」、「最高級アナツバメの巣&シアロ糖ペプチド配合」と書かれています。


 「アナツバメの巣」とはいったい何でしょう。中華料理などに使われる高級食材のいわゆる「燕の巣」のことで、海に面した断崖に作られるアナツバメの巣は、親鳥の唾液成分を主体としています。下の写真は、ウィキペディアに掲載されていたアナツバメの巣の写真です。十和田キャンパスで目にする泥の塊みたいなツバメの巣とは、ずいぶん違います。


 アナツバメの唾液には、「シアル酸」という物質が多く含まれているため、ほぼ唾液のみで作られる巣もシアル酸が豊富です。なお、この物質は唾液腺から発見されたので、唾液(saliva)にちなんでシアル酸(sialic acid)と命名されました。シアル酸は糖の一種(酸性糖)で、その一般構造は下に示すようなものです。


 シアル酸は生体内の多くの場所に存在しますが、その量はそれほど多くありません。身近な食品では、牛乳や卵黄に割合多く含まれています。下の表にシアル酸が比較的多い唾液や食品における含量をまとめましたが、ツバメ唾液の数値は突出しています。


 シアル酸には様々な生理活性がありますが、注目されているものにインフルエンザ予防効果があります。インフルエンザウイルスの感染は、粘膜(喉など)のシアル酸に結合することにより起こります。インフルエンザウイルスのもつ「ノイラミニダーゼ」という酵素が、この感染(結合)に直接関わっています(下図)。


 しかし、ノイラミニダーゼにシアル酸を結合させてしまうと、ウイルスは粘膜のシアル酸とは結合できなくなり、感染を防ぐことができます。下の図のように、シアル酸がインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼをブロックしてしまいます。なお、タミフルやリレンザといったインフルエンザ治療薬も、シアル酸に似た構造を有しています。


 シアル酸(アナツバメの巣)を含む飴の効果がどれほどのものかは私も知りませんが、上のような説明からは試してみる価値もありそうです。ウイルスにさらされる機会が多い外出時などに舐めると、効果的なのかもしれません。舐め終わった後の効果の持続性(シアル酸の残存)が、気になるところです。


 昨年もこの時期に、「インフルエンザ予防と食品」でインフルエンザ予防に役立ちそうな製品を紹介しました。「R-1ヨーグルト」の品薄も思い出されます。今年も注目される製品が登場するのでしょうか。



この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
225:たべるマスク(2016/11/29)
111:インフルエンザ予防と食品(2012/02/28)
109:玉子酒と粉末酒(2012/01/25)
40:たたかう初乳(2009/03/10)
食品のトピックス | 10:20 | 2013.01.26 Saturday |