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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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「a-i ペプチド」とキャットフード

No.136


 下の図はこれまでにこの欄で何度か使ったものですが、タンパク質、ペプチド、アミノ酸の関係をわかりやすく示したものです。タンパク質の分解により生成するペプチドは、タンパク質やアミノ酸とは保健的な働きや嗜好性が大きく異なります。私たちは、このペプチドを利用した「美味しくて体に良い」ペットフードの研究開発に取り組んできました。


 私たちは大手ペットフードメーカーのアイシア株式会社と共に、鶏肉や魚肉を酵素分解して得たペプチド素材を配合した付加価値の高いキャットフードの誕生を目指しました。幸いにして、国からの大型研究資金を受け入れることもでき、順調に研究開発が展開しました。この経過については、「産学官連携でペットフード開発」にも書きました。2007年9月には、「MiawMiaw(ミャウミャウ)カリカリ小粒タイプ」という製品が誕生しました。下の写真は、アイシア社の開発担当者の高井達氏と開発製品を前にして当時撮ったものです。高井氏は、私たちの研究室の卒業生だったこともあり、非常にうまく仕事を進められました。


 すでにこの製品が誕生してから5年以上が経ち、しっかりと市場に定着させることができました。なかなか評判がよく、「美味しくて体に良い」キャットフードを実現できたものと自負しています。「楽天」や「アマゾン」といったインターネット上のユーザーカキコミからも、好評な様子がうかがえます。今日に至るまでに何度かパッケージのリニューアルが行われ、デザインや書かれているフレーズが少しずつ変わってきました。下の写真は、2008年当時のパッケージで、「ストレスを感じやすい猫用」とか「ストレスケア」という文字が目立っています。


 この製品に配合したペプチド素材は、強い抗酸化活性を示し、ラットやマウスに経口投与した場合にストレス性胃潰瘍の予防や各種ストレスマーカー値の低下が認められました。また、ネコを対象とした検討でも、酸化ストレスマーカーである血清ヒドロペルオキシド値の低下など抗ストレス作用を示す結果が得られました。近年、猫や犬などの愛玩動物でも、ストレスが関与する疾患が増えていると指摘されており、発売当初からこの製品では「ストレスケア」を製品コンセプトとして前面に出していました。


 2008年に農林水産省消費・安全局長が、「動物用医薬品等の範囲に関する基準について」を示し、ペットフードやペット用サプリメントが動物用医薬品等として薬事法の適用を受けるべきものであるかの判断材料となっています。この中で、「ストレスを減らし、免疫性と、有用なホルモンの増加をもたらします。」という表示例があげられており、これは医薬品的な効能効果の標ぼうと見なされるとの見解です。ペットフード公正取引協議会が2012年に作成した「ペットフード等の薬事に関する適切な表記のガイドライン」にも、疾病原因としてのストレス表記が医薬品的表記になるとしています。2009年に「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)が施行されるなど、この数年の間にペットフード業界は製品表示に大きな変革を迫られました。もちろん、ペットフードの表示に対するユーザーの関心も、かなり高まっています。


 私たちが研究開発に関わったキャットフード「MiawMiaw」においても、製品パッケージ等における表示の変更が重ねられてきました(下写真)。現在の製品では、パッケージ上部のフレーズから「ストレス」の文字が消えています。ルールには従わなくてはなりませんが、製品コンセプトが以前よりもわかりにくくなったことは否めません。


 今年3月(2013/3)からの新しいMiawMiawのパッケージ(上の最下段)には、「a-i ペプチド配合」というピンク色のロゴマークが付けられるようになりました。なんとか製品の特徴(コンセプト)をユーザーの皆さんにお伝えするために考え出されたものです。ただ、このマークだけ示しても、「a-i (エーアイ)ペプチド」の内容が伝わらなければ、あまり意味がありません。


 現在商標出願中である「a-i ペプチド」は、抗ストレス作用などの保健的機能性だけでなく嗜好性にも優れたペプチド素材です。「a-i (エーアイ)」は、Anti-Inhibitory-Factors(抗阻害因子)に由来していますが、アイシア社の「アイ」や「愛」などいくつかの言葉との関連もあります。ハート型のロゴマークは、猫の愛らしい顔もあらわしています。このネーミングやロゴマークには、健康を害する要因を排除する「美味しくて体に良いペプチド」という意味が込められており、私もかなり気に入っています。


 MiawMiaw製品のパッケージ裏面には、「a-i (エーアイ)ペプチドは北里大学獣医学部有原圭三教授と共同研究した愛猫の心の健康維持をサポートするペプチドです。」と書かれています。なお、「心の健康維持」という表現も気になるところですが、現時点では使用しても大丈夫なようです。


 今年3月に登場した「a-i ペプチド配合」というロゴマークの入ったMiawMiaw製品のキャットフードは、ドライタイプ3種とウェットタイプ5種となっています。今後、a-i ペプチドについてのさらなる研究成果の蓄積とその発信を工夫し、ペットオーナーへの情報浸透に努めるつもりです。


 近年、いわゆる機能性ペットフードの範疇に入る製品が多く登場しています。しかし、しっかりとした研究成果に基づいて開発されたものから、単にイメージだけの製品まで様々です。薬事法などの厳しい制約の中では、ユーザーにとっても製品選択の判断材料が乏しい状況があります。メーカーは、製品コンセプトをうまく伝えるために、知恵を絞らなければなりません。


 雑誌『食品工業』の5月15日号(2013年4月15日発行)は、「ペットフード市場を探る」を特集とします。その特集の中で、私は「ペプチド素材を利用した機能性ペットフード ―「a-i ペプチド」配合キャットフードの誕生―」を執筆しています。今回の記事よりも詳しい記述がありますので、そちらもご覧いただければ幸いです。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
233:「a-iペプチド」と「AIペプチド」(2017/03/27)
214:ヒトもペットも食でストレス解消(2016/06/10)
186:機能性ペプチドの書籍を監修(2015/04/10)
155:ペットフードと乳酸菌(2013/12/25)
154:ペットフードの書籍を監修(2013/12/10)
153:ネコにタウリン(2013/11/25)
152:ペットフードの歴史(2013/11/11)
70:気になるペットビジネス(2010/06/11)
24:ペットフードと特許(2008/07/09)
21:産学官連携でペットフード開発(2008/05/26)
10:ペプチドは魅力的なペットフード素材(2007/12/10)
7:ペットフードの安全性確保を巡る情勢(2007/10/26)
4:「機能性ペットフード」の可能性(2007/09/07)
ペットフードのトピックス | 16:02 | 2013.03.12 Tuesday |