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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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6次産業化とレストラン「NARABI」

No.141


 十和田市に近い七戸町にあるジェラートショップ「NAMIKI」は、ジャージー牛乳を使った美味しいアイスクリームが評判です。お店のオープンから3年近く経ちましたが、年間約10万人のお客さんが訪れる人気です。


 先日(2013/5/10)、このNAMIKIのすぐ隣に「NARABI」というレストランがオープンしました。赤レンガ造りのなかなか洒落た外観の建物です。このお店のウリは、美味しい牛肉です。


 NAMIKIもNARABIも青森県七戸町にある金子ファームが経営しています。金子ファームでは、「健・育・牛(けんいくぎゅう)」というオリジナルブランドの牛肉を生産しています。素牛の導入から餌の配合や健康管理まで、愛情をもって育てられ生産される純国産牛肉とのことで、レストランNARABIのメニューにも使用されています。なお、NARABIという名前は、NAMIKIと並んでいるから名付けられたそうです。


 ところで、最近よく農業の「6次産業化」という言葉を耳にします。安倍内閣の掲げる成長戦略の中でも、6次産業化が農業分野の所得向上策の柱となっています。学生諸君に6次産業化の話をすると、案外知らない人が多いようです。ここでは、少し基本的なことから解説しておきます。クラークの産業分類というのを小学校でも教わりますが、産業を第1・第2・第3次産業に分けたものです(下表参照)。


 最近になって登場した「第6次産業」は、第1次産業の「1」、第2次産業の「2」、第3次産業の「3」を足すことに由来しますが(1+2+3=6)、各産業の寄せ集め(足し算)ではなく、総合的な結びつきを意味する掛け算(1×2×3=6)で説明されることが多くなっています。

 農業の6次産業化は、農業者が農産物の生産(第1次産業)だけでなく、食品加工(第2次産業)、流通・販売(第3次産業)にも関わることによって、農業の活性化を目指すものです。6次産業化の推進を掲げる政府は、様々な支援策を打ち出しています。今回紹介したレストランNARABIも、6次産業化事業として認められ、国の補助金を有効に活用しています。


 オープン間もないNARABIですが、連日大勢のお客さんで賑わっており、「健・育・牛」を使った3種類のメニュー(牛肉カレー、NARABIごはん、サーロインステーキ)も好評です(上写真)。私は先日「NARABIごはん」(¥1000、下写真)をいただきましたが、なかなか結構なお味でした。


 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加が実現すると、日本の畜産も厳しい状況にさらされますが、6次産業化の取り組みが活路を開く一手になるかもしれません。産業としての規模拡大が課題にも思えますが、地域産業の振興策としても期待したいところです。

 広大な牧場内にあるジェラートショップNAMIKIやレストランNARABIは、東北新幹線の七戸十和田駅(2010年に設置)に近く、観光スポットとしても魅力的な存在になりつつあります。地域の貴重な資産として発展してもらいたいものです。下の写真は、NAMIKIとNARABI周囲で撮ったものです。


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