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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ミドリムシが世界を救う!?

No.144


 先日、近所のスーパーで、「ユーグレナ カンパン」という缶詰を見つけました。「ユーグレナ」は最近よく新聞や雑誌に登場するのでご存知の方も多いかと思いますが、「ミドリムシ」の学名です。ちなみに、ユーグレナは「美しい目」という意味で、この生物が赤い眼点をもつことにちなんで名付けられたそうです。


 ユーグレナカンパンには、石垣島産のユーグレナが1缶あたり500mg入っているそうです。缶の背面の説明には、下の写真のような記載があります。食べてみると、思いのほか美味しく、研究室の学生諸君にも割合と好評でした。


 3年ほど前に、「ミドリムシクッキー」というのが結構評判になったことがありました。お台場の日本科学未来館にも置かれ、人気があったようです。私もお土産でいただいたものを食べてみましたが、少々青っぽい味がしてあまり美味しいとは思いませんでした。パッケージには「世界を救う!?未来の食べ物?」と書かれていましたが、嗜好性の面から少し難しいのかなと思っていました。


 「ユーグレナ カンパン」や「ミドリムシクッキー」に使われているミドリムシ(ユーグレナ)は、株式会社ユーグレナが供給しています。この会社は2005年に設立されたバイオベンチャーです。その歩みは順風満帆ではなかったものの、困難であったユーグレナの屋外大量培養に世界で初めて成功するなどを経て、2012年暮れに株式上場に至っています。この間の経緯については、出雲充社長による『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。―東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦』(ダイヤモンド社, ¥1575, 2012/12)に詳しく書かれています。


 「バイオマス5F」という原則があります。「5F」というのは、下の表にあげた5項目を指しますが、これらは単価が高い順に並べられています。まずは単価の高い製品(食品・食料)を製造し、この間に生産効率を高めていき、単価が安く大量に供給する必要がある分野へ事業展開するという原則です。


 ユーグレナ社の供給するミドリムシは、「食料」分野では100以上の製品に利用されています。「繊維」に近い化粧品における商品化も果たし、「飼料」分野における取り組みも進められているとのことです。注目すべきは、最終段階の「燃料」です。ユーグレナは嫌気条件で体内にワックスエステルを蓄積しますが、このワックスエステルは比較的簡単な処理でジェット燃料にすることができます。すでに、バイオジェット燃料としての実用化を目指す経済産業省や文部科学省のプロジェクトが進んでおり、5年後の実用化が目標として設定されています。


 ミドリムシについてもっと知りたいという方のために、もう1冊関連書籍をあげておきます。『ミドリムシは植物ですか?虫ですか?』(羽鳥まりえ, エンターブレイン, ¥651, 2013/5)という本です。コミックなので、好き嫌いがあるかもしれません。


 ユーグレナ社を設立した出雲社長は、もともとバングラデシュなどの発展途上国で貧困や飢餓に苦しむ人々を救うために、ミドリムシに注目しました。しかし、ミドリムシは光合成により二酸化炭素を吸収すると同時に、バイオ燃料を産み出すこともできます。食料問題にとどまらず、地球温暖化問題やエネルギー問題といった大きな課題の解決に貢献しうる微生物かもしれません。

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213:地球と食の未来(2016/05/25)
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その他のトピックス | 11:23 | 2013.07.10 Wednesday |