2013.09.25 Wednesday
トルコアイスとサーレップ
No.149
前々回、トルコの「アイラン」という飲料を紹介しました。今回は、日本でも割合よく知られている「トルコアイス」の話です。2002年に雪印乳業が「トルコ風アイス」を発売し、結構長い期間販売されていたので、覚えている方も多いと思います。
トルコアイスの最大の特徴は、独特の粘り気があってよく伸びることです。トルコでよく見かける屋台では、大きなアイスの塊を大胆に伸ばすパフォーマンスを行っています(下の写真は、今夏トルコで撮ったもの)。
トルコアイスがよく伸びるのは、サーレップ(salep)粉を原料に用いているためです。サーレップはラン科の植物で、その球根から得た粉が食用にされています。サーレップ粉はデンプンを主成分としていますが、砂糖とともに熱湯で溶かしたものがトルコでは冬場の飲料として人気があります。スーパーの店頭にも、インスタントサーレップが並べられています。
私も試してみましたが、食感は日本で親しまれている葛湯(くずゆ)そのものでした。ミルクの味とシナモンの香りがするものが多く、冬場に体を温める飲み物として悪くないと思いました(下の写真は、インスタントサーレップの粉)。
さて、トルコアイスに話を戻します。サーレップ粉がトルコアイスに独特な粘性を与えますが、高価な原料でもあります。冒頭で紹介した「トルコ風アイス」の原材料名の表示にも、見当りません。澱粉や増粘多糖類が、サーレップ粉の代わりに使われています。
以前、小中学生を対象とした夏休み体験学習のために、私たちの研究室の大畑素子先生がサーレップ粉を使ったトルコアイスを作ったことがありました。このホームページをご覧になった方々から、サーレップ粉の入手方法の問い合わせがありました。日本では、サーレップ粉の入手は、なかなか難しいようです。
あるテレビ番組で、家庭で簡単にトルコアイスを作る方法として、納豆のネバネバ部分をアイスクリームに入れてこねるというのがありました。意外なことに、納豆の香りは気にならないそうです。興味のある方は、お試しください。羽田空港第2ターミナルのワールドフードコートにある「ミセスイスタンブール」(下写真)では、トルコアイス「どんどるまん」を食べることができます。本物のトルコアイスを楽しみたいという方は、こちらのお店をご利用ください。
サーレップ粉をたっぷりと使った伝統的なトルコアイスは、極端に強い粘り気があるため、ナイフとフォークを使って食べることもあります。日本のお餅のように喉に詰まらせる心配があるので、水と一緒に摂るのが古くからの食べ方でした。このため、粘り気のないアイスクリームを食べるときも、トルコでは水の入ったグラスを傍らに置く習慣があるそうです。
食品のトピックス | 08:56 | 2013.09.25 Wednesday |