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トピックス

北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ペットフードの歴史

No.152


 現在、『 ペットフード・ペット用医薬品の最新動向 』という書籍の監修作業を行なっています。 この本の第1章 「 ペットフードの変遷と環境変化 」 は、私が執筆を担当しました。 その際に、ペットフードの歴史について勉強したので、今回はその一部を紹介します。


 まず最初に、ペットフードの定義について、簡単に触れておきます。基本的には、犬や猫といった愛玩動物用に加工調製されたものがペットフードです。もちろん、未加工の畜肉や魚肉も、犬や猫は食べます。しかし、これらはペットの食餌ではありますが、ペットフードではありません。犬用に加工調製されたものをドッグフード、猫用のものをキャットフードと呼んでいます。


 このようなペットフードの原型とも言えるものが誕生したのは、およそ150年前のことでした。当時の欧米では、航海の際にビスケットを食料として船に積み込んでいましたが、航海を終えると波止場に捨てていました。このビスケットを食べあさる野良犬に注目したのが、米国人のジェームス・スプラットでした。彼は、1860年にイギリスで世界で最初のドッグフード(犬用ビスケット)を事業化しました。(下の写真は、現在市販されている犬用ビスケット)


 その後、1870年に米国での事業も始まりました。最初のペットフード誕生からしばらくの間の歴史を、下の年表に示しました。米国を中心にペットフード産業は発展し、ミルクボーンビスケット、缶詰ドッグフード、ドライドッグフードなどが誕生していきました。1950年代に入ると、ピュリナ社がドッグフードの大量生産を開始しました。一方、キャットフードは需要が少なかったこともあり、初期はドッグフードを転用(共用)したものが多かったようです。しかし、ネコの栄養生理的な特性がイヌとは異なることが明らかになり、やがて猫に特化したフードが開発されるようになりました。


 イギリスで犬用ビスケットが事業化されてからちょうど100年後の1960年に、日本で最初のドッグフード「ビタワン」が協同飼料から発売されました(現在は、日本ペットフードが製造販売)。当初、ペットフードの販路が日本には存在しなかったため、ビタワンは米穀店で販売されました。お米屋さんの店先に掲げてあったビタワンの看板を覚えている方もいると思います。(下の写真は、現在の「ビタワン」パッケージ)


 お馴染みの「ビタワン」キャラクターですが、ビタワン発売50周年を迎えた2010年に少し顔が変わりました。下に新旧のキャラクターを載せましたが、新しいもの(右)は睫毛がなくなるなど微妙に違っています。ただ、50年前に描かれた古いキャラクターが、今日でも十分に通用することにも驚かされます。なお、ビタワンの歴史は、NTTコムウェア「COMZINE」の「ニッポン・ロングセラー考」に詳しく紹介されていますので、そちらもご覧ください。


 ビタワン登場からの50年間で、日本のペットフード市場は大きく発展しました。その間の出来事をおおまかにまとめた年表を下に載せました。日本のペットフード市場は、1960年代から1970年代の「開拓期」と1980年代2000年頃までの「成長期」を経て、今「成熟期」を迎えていると言われています。


 日本におけるペットフード流通量は2005年以降減少傾向に転じましたが、出荷額はなお堅調に推移しています(下のグラフ参照)。この背景として、フード摂取量の少ない動物(小型犬)に人気が移ってきたことや、ペットフードの高付加価値化(プレミアム化)が進んでいることがあげられます。日本のペットフード市場は、「量」から「質」的な発展期に移行したということでしょう。


 ペット飼育の4大潮流として、「高齢化」、「室内飼い化」、「小型犬化」、「肥満化」があげられるようになってから、かなりの時間が経ちました。また、2009年にペットフード安全法が施行されるなどの制度上の大きな出来事もあり、ペットフード業界は新たな状況への対応に迫られています。


 ホームセンターなどの量販店の店頭に大量に並べられているペットフードですが(写真上)、製品の顔ぶれも近年だいぶ変わってきています。保健的機能性や嗜好性を高めたプレミアムフードが急増しているほかにも、レトルトパウチやアルミ/プラスチックトレイなど包装形態も変化しています(下写真)。


 『ペットビジネスハンドブック2013』(産經メディックス)には、2012年から2013年にかけてのペットフードメーカー各社の商品開発の方向性がまとめられています。.廛譽潺▲燹Ε后璽僉璽廛譽潺▲爛屮薀鵐桧蘋、▲薀ぅ侫好董璽己漫特に高齢化・老齢化対応商品、小型犬・超小型犬対応商品、じぁη種別商品、ト酲防止対策商品、Φ’柔成分強化商品、Дップ容器商品、低価格対応商品、サイズマーケティングの徹底、という9項目があげられています。高付加価値化を進める一方で、低価格商品の開発にも対応するという難しい状況がうかがえます。


 冒頭で紹介した書籍『ペットフード・ペット用医薬品の最新動向』は、すでに編集作業が最終段階に入っており、来月(2013/12)には刊行される見通しです。もう少しすると、「シーエムシー出版」のホームページに、書籍案内が掲載されると思います。かなり高価な書籍なので、気軽にお勧めすることができないのが残念ですが、ペットフードの研究開発に携わっている方々はご覧になる価値があるものと自負しています。



この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
201:イヌとネコの科学(2015/11/25)
168:「ワンプッシュ」と「ニャンプッシュ」(2014/07/10)
155:ペットフードと乳酸菌(2013/12/25)
154:ペットフードの書籍を監修(2013/12/10)
153:ネコにタウリン(2013/11/25)
136:「a-iペプチド」とキャットフード(2013/03/12)
70:気になるペットビジネス(2010/06/11)
24:ペットフードと特許(2008/07/09)
21:産学官連携でペットフード開発(2008/05/26)
10:ペプチドは魅力的なペットフード素材(2007/12/10)
7:ペットフードの安全性確保を巡る情勢(2007/10/26)
4:「機能性ペットフード」の可能性(2007/09/07)
ペットフードのトピックス | 12:30 | 2013.11.11 Monday |