2013.11.25 Monday
ネコにタウリン
No.153
今回は、栄養ドリンクでおなじみの「タウリン」です。市販の栄養ドリンクでは、「2000mg」や「3000mg」とタウリンの配合量を誇っているものが少なくありません。
下の栄養ドリンクのパッケージに表示されているように、タウリンは、ビタミンB2・B6などと共に、肉体疲労の改善に有効なようです。
タウリンは、肝臓・心筋の保護や神経伝達・調節に関与していることが明らかにされています。また、細胞内の抗酸化機能亢進によっても様々な作用を生体内で発揮しています。日本では、タウリンは医薬品の扱いをされているため医薬部外品の栄養ドリンクにおける使用が中心となっていますが、うっ血性心不全や肝機能障害に対する医薬品としても用いられています。なお海外では、タウリンを使用した食品(サプリメントや清涼飲料水)も製造販売されています(下の写真は米国のサプリメント製品)。
タウリンはアミノ酸の一種ですが、タンパク質を構成している20種類のアミノ酸とは少し構造が異なっています。魚介類やタコ・イカといった軟体動物に多く含まれており、スルメイカ表面の白い粉の主成分もタウリンと言われています。われわれ人間は、かなりのタウリンを食物から取り込んでいますが、体内でもシステインから合成しています(下図)。ただ、乳幼児期はタウリン合成能が低いため、市販の調製粉乳にはタウリンが添加されています。
ところで、ネコはタウリンを体内で合成することができないため、必須アミノ酸となっています。ネコでタウリンが不足すると、拡張型心筋症や網膜萎縮(視力低下・失明)を発症します。畜肉や魚肉にはタウリンが比較的多く含まれているので、これらを主に摂取しているネコであればタウリン不足の心配はありませんが、穀物を原料として使用しているキャットフードでは、タウリンを添加する必要があります。昔よく与えていた「ねこまんま」は、典型的なタウリン欠乏食と言えるでしょう。
ネコにおけるタウリンの重要性が認識され、現在の市販キャットフードの多くには、下の原材料名表示例のようにタウリンが添加されています。タウリンを添加していないドッグフードを転用していた初期のキャットフードでは、タウリン不足となることも多かったようです。一部の犬種でも、血漿タウリン濃度が低いと拡張型心筋症が発症しやすいことが明らかにされ、ドッグフードにもタウリンを添加したものが増えています。なお、タウリンは、医薬品的な効能効果を標榜しなければ、ペットフード原料として使用することができます。
ネコにとって重要な成分ということで、タウリン配合を強調しているキャットフードも目にします。人間向けの栄養ドリンクのような感じの表示ですが、ヒトとネコではタウリン配合の意義が少し異なっています。
ヒトでは、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリンの9種のアミノ酸が体内では十分に合成されないため、食物として摂取する必要がある必須アミノ酸となっています。イヌでは、これらにアルギニンを加えた10種が必須アミノ酸です。ネコでは、ヒトの9種にアルギニンとタウリンを加えた11種です。ネコの必須アミノ酸が多いのは、肉食動物の特性を強く残しているということに関係しているようです。
ペットフードのトピックス | 14:06 | 2013.11.25 Monday |