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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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食べて治す食物アレルギー

No.160


 前回の花粉症に続き、今回もアレルギー関連の話題です。花粉症とよく似た仕組みで発症するアレルギー疾患に、「食物アレルギー」があります。食物アレルギーを防ぐためには、原因となる食品を避けることが大切だと言われてきました。いわゆる「食物アレルギー対応食品」も、大豆や鶏卵といった原因食品を使用しない製品や、米グロブリンのようなアレルギー原因物質(アレルゲン)を分解除去したものが中心です。


 しかし、この10年間で食物アレルギーへの対応は大きく進歩し、「経口免疫療法」が注目されるようになりました。これは、原因となる食物を少量から段階的に増やして摂取する治療法です。この治療法を実施するためには、「食物経口負荷試験」によりアレルギー原因食物を特定し、どの程度の量まで食べられるかを明らかにする必要があります。平成20年には、この試験が健康保険適応になりました。経口免疫療法を一般向けに解説した書籍はまだ見当たりませんが、下にあげた『経口免疫療法Q&A 食物アレルギー治療が変わる!』(中山書店, ¥4000, 2012/8)は、比較的親しみやすい専門書です。


 花粉症や食物アレルギーといった儀織▲譽襯ーの発症に共通して重要な存在が、「IgE抗体」です。IgE抗体の産生を抑えることができれば、食物アレルギーの発症を免れることができます。以前、「花粉症と乳酸菌」で書きましたが、ある種の乳酸菌を経口摂取すると花粉症の予防効果が期待できます。これは、ヘルパーT細胞(Th1/Th2細胞)のバランスが制御されて、IgE抗体の産生が抑制されるためと考えられています(下図)。


 食物アレルギーにおける経口免疫療法で、少量の食物アレルゲンの反復摂取によりIgE産生量が減少するのは、ヘルパーT細胞のバランスが調節されることやIgE抗体の代わりにIgG抗体が産生されてアレルゲンと結合するといったことが言われています(下図)。


 「経口免疫療法」は比較的新しい治療法ですが、「経口免疫寛容」という現象は古くから知られていました。また、この現象は経験的に利用されていたとされ、「漆職人」の話がよく知られています。「漆(うるし)」は皮膚に触れるとかぶれ(アレルギー)を起こします。しかし、漆職人はそんなことを言ってはいられません。漆職人の子供は、小さいころから漆を少しずつ舐めさせられ、漆アレルギーを防いだとのことです。なお、漆器(しっき)作りに使われる「漆」は、ウルシ科の植物(下写真)の樹液から調製されます。


 最後に、今回、目を通した書籍2点をあげておきます。『食べて治す食物アレルギー 特異的経口耐性誘導』(診断と治療社, ¥3400, 2010/5)『症例を通して学ぶ年代別アレルギーのすべて』(南山堂, ¥5000, 2013/11)です。いずれも臨床医向けの専門書ですが、症例が多く紹介されており、経口免疫療法に対する理解が深まります。ただ、経口免疫療法は専門医の診断と指導に基づいて実施しないと、アナフィラキシーショックなどの危険を伴うものですので注意してください。


この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
159:花粉の季節が到来(2014/02/25)
128:食物アレルギー対応食品(2012/11/12)
111:インフルエンザ予防と食品(2012/02/28)
101:山羊乳の魅力(2011/09/26)
39:花粉症と乳酸菌(2009/02/25)
食品のトピックス | 14:35 | 2014.03.10 Monday |