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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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インドネシアの発酵食品

No.161


 先日、インドネシアのボゴール農科大学を訪れる機会がありました。ボゴール農科大学の様子は、研究室のホームページで紹介しましたので、そちらもご覧ください。ここでは、インドネシアで目にした発酵食品を取り上げることにします。


 インドネシアは、大小1万を超える島々で構成されています。首都ジャカルタのあるジャワ島とバリ島は地理的には隣接していますが、イスラム教徒が大部分を占めるジャワとヒンドゥー教の島であるバリは、別の国と言ってもよいほどの文化的違いがあります。豚肉が忌避されるジャワに対して、バリでは子豚の丸焼き(下写真)が名物料理です。


 食文化も地域的な差が大きいインドネシアですが、この国を代表する発酵食品として「テンペ(Tempe)」をあげることができます。もともとは、ジャワ島を中心に作られていた大豆発酵食品ですが、今日ではスマトラやバリなどでも普通に食されているようです。テンペはスーパーの店頭ではあまり見かけず、いわゆる市場(いちば)で入手する食品との話でした。インドネシアの市場は早朝に開かれるので、旅行者には少々手に入れにくい食品かもしれません。


 バナナの葉で包んでいるのが伝統的なスタイルですが(写真上)、最近はビニール包装のものも多いようです。テンペは、煮沸した大豆にカビ(Rhizopus oligosporusなどのクモノスカビ)を接種し、室温で2日間程度発酵させて製造されます。「インドネシアの納豆」と呼ばれることもあるテンペですが、細菌を用いる納豆とカビを用いるテンペでは、風味が大きく異なっています。


 上の写真は新鮮なテンペを割ったものですが、綿状のカビ菌糸が美しく感じられました。最近では、日本でもテンペを入手できるようになりましたが、少し硬い感じのものが多いようです。インドネシアでは、テンペをそのまま(生テンペ)で食べることはあまりなく、油で揚げたり、スープなどの具として利用されます。インドネシアの生テンペを食べたところ、非常に淡白な風味で、納豆よりもずっとクセのないものでした。インドネシア滞在中によく食べたのは、メインの料理に添えられた「揚げテンペ」(下写真)でした。個人的には、生テンペに醤油を少し付けて食べた方が美味しいのではないかと思っています。


 バリ島のスーパーでたまたま見つけた発酵食品が、「タペ(Tape/Tapai)」でした。下に写真を示しましたが、小さなカゴのような容器に入った製品が並べられていました。店員に尋ねても、「インドネシアの伝統的食品」以上の情報を得ることができませんでした。しかし、タクアンのような匂いは発酵食品を確信させるものでしたので、購入してホテルに持ち帰りました。


 中にはバナナの葉で包まれたものが入っており、それを開くとカビの生えたやわらかいタクワンのような姿が出現しました(下写真)。匂いも少々きつかったので、この時点では、ちょっと口には入れらないと思いました。


 しかし、塊をひとつ摘んで割って見ると、思いのほか綺麗な断面でした(下写真)。そして、この食品の原料がイモであることも、判明しました。植物性食品にさほど詳しくない私でも、この食品がイモを麹カビで発酵させたものと推測できました。


 これだけの情報が得られれば、後は口に入れるだけです。いつの間にか匂いも気にならなくなっていて、美味しそうにすら見えてきました。実際に、とてもやわらかくて甘い焼き芋のような味でした。後で調べたところ、このタペ(正確には、「タペ・シンコン(Tape Singkong)」)は、キャッサバ(タピオカの原料となるイモ)を「ラギ(Ragi)」と呼ばれる麹(カビ)で発酵させたインドネシアの伝統食品とのことです。もち米を原料とした「タペ・クタン(Tape Ketan)」もあるそうです。なお、タペについては、こちらの文献(アサヒビールのサイトより PDF:91KB)が役立ちます。


 今回、ボゴール農科大学(上は大学のマーク)を訪れ、Agricultural Engineering and Technology学部の中にあるFood Science and Technologyの学科の皆さんにお世話になりました。Animal Science学部内にも、畜産食品を扱う研究室があるということで、お伺いしました。下の写真は、畜産食品工学研究室のIrma先生(手前)から、「ダディ(Dadih)」という発酵乳の説明を受けている様子です。


 ダディは、主にスマトラ島で作られているインドネシアの伝統的発酵乳です。竹筒の容器に水牛の乳を入れてバナナの葉で蓋をします。室温で2日間ほど静置すると発酵乳となります。自然発酵により作られており、数種の乳酸菌(竹由来?)が発酵に関与しているとのことです。少しだけ食べさせていただきましたが、チーズのような香りが特徴的でした。日本でも、この発酵乳をヒントに、「ダディヒヨーグルト」という製品が開発されたことがあります。


 ジャワ島の伝統的発酵乳製品として、牛乳を原料とする「ダンケ(Danke)」があり、こちらはチーズのような製品とのことでした。しかし、ボゴールやデンパサールといった都市のスーパー店頭には、この種の伝統的発酵乳製品は見当たりません(下の写真は、ボゴールのスーパー店頭)。どこのスーパーでも、大量の「ヤクルト」が並べられていたのが印象的でした。


 乳製品のインドネシア国内ブランドとしては、「Indomilk」がかなり強く、「Diamond」 や 「Yummy」 の名もよく目にしました。 これらのメーカーの乳製品パッケージを見ると、 「Probiotic」、 「Prebiotic」、 「Omega 3」 といった単語が結構ありました(下写真)。 この国でも、機能性食品への関心が高まっている様子がうかがえます。


 次回も、インドネシアの「食」に関連する話題をお届けする予定です。
この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
163:イスラム市場とハラル食品(2014/04/25)
162:インドネシアの食品市場(2014/04/10)
150:モンゴルの「白い食べ物」(2013/10/10)
147:トルコの乳酸発酵飲料「アイラン」(2013/08/30)
67:世界の市場(2010/04/26)
57:佐渡の「へんじんもっこ」(2009/11/25)
食品のトピックス | 10:58 | 2014.03.29 Saturday |