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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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死んでも働く乳酸菌

No.167


 乳酸菌の摂取が体に良いと思っている方は、多いことでしょう。乳酸菌を利用した食品が大きな市場を形成していることからも、このことがうかがえます。ところで、乳酸菌の働きを期待する場合、摂取した菌が「生きたまま」腸管に到達することが重要だと言われてきました。下に示したような表示をして、このことを強調した製品も多く見られます。


 乳酸菌の中には、摂取後に胃酸や胆汁で殺されてしまい、生きた状態で腸管に到達できないものもあります。生きた乳酸菌の方が、腸管内での活躍が期待できそうなのは誰しもが思うことでしょう。しかし、最近、「死んだ」乳酸菌を使った製品でも、体に良さそうなものをよく目にします。


 上の写真の製品は、いずれも加熱殺菌処理を経て充填されたものであり、「生きた」乳酸菌は入っていません。パッケージにも、下のように「殺菌」されている旨の表示がされています。


 ずいぶん前から、死んでしまった乳酸菌の摂取にも、保健的作用があることは報告されていました。たとえば、乳酸菌の細胞壁成分は、サイトカイン誘導などの免疫活性を示すため、死んだ乳酸菌でもそれなりの効果があるといったことです。最近では、このような効果が一段と注目され、加熱殺菌処理された乳酸菌を利用した下の写真のような製品が増えています。


 これらの製品のパッケージの原材料名には、「 乳酸菌(殺菌) 」 や 「 加熱済乳酸菌末 」 といった表示がされています。 「 10億個 」 などとパッケージに誇らしく菌数が書かれていますが、これは死菌の数なので、誤解を招くような感じがしないでもありません。


 東京大学名誉教授の光岡知足先生は、腸内細菌学の創始者とも言える方で、乳酸菌に関して多くの業績をあげられました。最近、光岡先生は、「生きた乳酸菌でも、死んだ乳酸菌でも、効果は同じ」といったことをよく言われています(たとえば、こちらのインタビュー記事)。「同じ」というのは、ちょっと極端な気がします。どちらにも、よいところがあるといったところではないでしょうか。


 以前、「 ペットフードと乳酸菌 」 という記事で、高温加熱処理を経て製造されるペットフードでは、生きた乳酸菌を利用することが難しいということを書きました。 加熱殺菌した乳酸菌にも、十分な保健的効果が期待できるとなると、ペットフードへの乳酸菌利用の状況も変わってくるかもしれません。 すでに、下の写真のような加熱殺菌処理した乳酸菌 ( フェカリス菌 ) を利用したレトルトパウチのキャットフードが登場しています。


 現在、食品原料として利用する加熱殺菌処理した乳酸菌は、フェカリス菌( Enterococcus faecalis )が主流のようです。 ニチニチ製薬株式会社の「 FK-23 」コンビ株式会社の「 EC-12 」 といった菌株 ( 製品 ) を利用した食品が多く見られます。

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食品のトピックス | 11:30 | 2014.06.25 Wednesday |