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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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牛肉の大和煮缶

No.180


 年末に東京のデパートで、「矢印牛肉やまとに」なる缶詰を見つけました(下写真)。レトロなラベルにコレクター心がときめき、躊躇なく購入しました。


 ラベルの記載によると、「永年の歴史をもつ製品」とのことです。商標登録されているという「矢印」も、いい感じです。調べてみると、明治26年創業の「宇和島缶詰」の伝統を守り続ける由緒ある缶詰のようです。


 最近の缶詰は、缶切りを必要としない「イージーオープン缶」が主流になっていますが、この製品には使い捨ての缶切りが付属しています。久しぶりに、このタイプの缶切りを目にしました。


 少々使い勝手の悪い缶切りで缶を開けると、立派な大和煮が姿を現しました。「固形量140g」は、なかなかのボリュームです。お味の方もよく、お値段だけのことはありました。


 「大和煮」は、明治時代に誕生した調理品と言われています。明治4年に江戸堀に創業した大和屋清七が小魚の甘露煮を製造したという説や、明治10年代に関東の缶詰業者が鶏肉の甘露煮を「大和煮」と名付けたという話があります。大正4年に東京の明治屋が販売した「牛肉大和煮缶」が人気を得て、広く認知されました。その後、「ノザキ」ブランドをはじめとする製品が、市場を拡大していきました。


 昭和の時代に比べると、大和煮缶を口にする機会はずいぶん少なくなりましたが、スーパーの棚には健在です。牛肉以外でも、馬肉や鯨肉の大和煮缶がよく並べられています。


 小泉武夫先生による『缶詰に愛をこめて』という本では、「まえがき」から牛肉大和煮缶に対する熱い想いが語られています。本文中でも、「牛肉缶三兄弟」の「長男」として登場します。ちなみに、「次男」は「コンビーフ缶」、「三男」は「すき焼き缶」だそうです。


 牛肉大和煮缶は、第二次大戦中には陸軍の携帯食としてたいへん人気があったそうです。現在でも、自衛隊の戦闘糧食に採用されているとのことです。レトルトパウチの普及などで存在感が薄れた缶詰全般ですが、災害に備えた非常食として再び注目されています。

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食品のトピックス | 12:06 | 2015.01.10 Saturday |