2015.04.27 Monday
プリン体と戦う
No.187
先日(2015/4/7)、「プリン体と戦う乳酸菌」 を前面に出した 「明治プロビオヨーグルトPA-3」 が発売されました。 「プリン体」 という単語に敏感な方には、気になる製品でしょう。
テレビや新聞でかなりの宣伝をしているので、この製品をご存じない方は少ないかと思います。どこのスーパーの店頭(下写真)でも盛大に並べられており、メーカーの意気込みが感じられます。
「プリン体」は、「プリン骨格」(下図)と呼ばれる構造を有する物質の総称です。 DNAを構成する核酸の材料などとして、人間を含めた生物にとって欠くことのできない存在です。 しかし、食物として摂取されたプリン体は、体内で「尿酸」に変換されます。 過剰の尿酸が結晶化して関節に析出すると、激痛を伴う痛風発作(通風性関節炎)を引き起こします。 私を含めた中高年男性の多くは、健康診断の尿酸値が気になります。
プリン体は遺伝子(DNA)を構成しているので、あらゆる動植物由来の食物に含まれています。とくにプリン体の多い食物の例を下の表にあげました。ビール酵母にはプリン体がかなり含まれていますが、飲料のビールにはそれほど多くありません。ただ、ビールはプリン体含量の割に尿酸値が上昇しやすいので、注意する必要があるようです。乾燥により水分含量が少なくなっている食品(煮干し、かつお節、干物など)は含量が高くなっていますが、これらは大量に食べる食品ではないでしょう。表中にはありませんが、多くの野菜や肉類には、プリン体が100〜300mg/100g程度含まれています。
一方、プリン体の少ない食品の例を下の表にあげました。プリン体が多いと言われることが多い魚卵類ですが、実はたらこや明太子以外はそれほど多くありません。筋子や数の子といった魚卵は、むしろプリン体が少ない食品です。
明治乳業からは、2000年に「明治プロビオヨーグルトLG21」が発売されました。このヨーグルトは、「リスクと戦う乳酸菌」をキャッチフレーズとしています。LG21という乳酸菌(Lactobacillus gasseri OLL2716)は、胃内におけるピロリ菌の増殖を抑制することから、胃潰瘍の予防などを期待できる製品のようですが、薬事法に抵触しない曖昧な表現になっています。
さらに明治乳業は、2009年に「明治ヨーグルトR-1」を発売しました。パッケージには、「強さひきだす乳酸菌」と書かれています。R-1乳酸菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)がインフルエンザ予防に役立つという話がマスコミを介して伝えられ、大ヒット商品となりました(「インフルエンザ予防と食品」参照)。なお、このヨーグルトの製品名は、今年(2015/3)「明治プロビオヨーグルトR-1」と改名されました。
「リスクと戦う乳酸菌」の「LG21」、「強さひきだす乳酸菌」の「R-1」、そして今回発売された「プリン体と戦う乳酸菌」の「PA-3」が加わりました。なかなか見事な「明治プロビオヨーグルト」のラインナップです。第4弾の製品は、どんなコンセプトで登場するのでしょうか。私は、パッケージの色やデザインも気になっています。
「リスクと戦う」や「強さひきだす」というフレーズは具体的な意味がないため、薬事法の定める「効能効果の標榜」に抵触する危惧はありません。しかし、「プリン体と戦う」はどうなのでしょうか。「痛風」といった病名がないので、ぎりぎりの表現なのでしょう。パッケージ背面(下写真)にも、詳しいことは書かれていません。なお、パッケージ記載の特許文献(特許第5237581号)によると、PA-3乳酸菌(Lactobacillus gasseri OLL2959)を高尿酸血症モデルラットに経口投与すると、血清尿酸値の上昇が抑制されたとのことです。PA-3乳酸菌は、プリン体を分解および吸収・利用する働きがあるようです。
今年度(2015)から新たに、食品の機能性表示制度が導入されました。すでに各メーカーから消費者庁に申請が行われており、6月には店頭で製品を目にすることができそうです。やがて、機能性ヨーグルトの表示においても、影響があらわれることでしょう。この制度のメリットを生かした魅力的な製品の登場に期待したいところです。
食品のトピックス | 09:50 | 2015.04.27 Monday |