2015.06.25 Thursday
メイラード反応と特許
No.191
これまで掲載した記事(トピックス)の中でアクセス数が多いものとして、「メイラード反応」関係のものがあります。ちょっと意外ですが、「食品と生体におけるメイラード反応」は、とくに多くの方にご覧いただきました。さて、代表的なメイラード反応として、アミノ酸と還元糖(たとえばブドウ糖)が加熱された際に起こるものがあげられます(下図)。
メイラード反応は、食品における最重要な化学反応のひとつと言えます。ほとんどの加熱加工食品において生じているだけでなく、台所で行われる調理においても普通に起きている現象です。メイラード反応を積極的に利用した製品(加工食品)は多くありますが、比較的最近の事例として、ビール風味のアルコール飲料「キリン のどごし〈生〉」があげられます。
「のどごし〈生〉」は、「ブラウニング製法」と名付けられた方法で製造されています。製品紹介のウェブサイトには、「深みのある味と香りを引き出すとともに、着色料を使用せず黄金の液色を実現。」とあります。また、「特許技術」と誇らしげに書かれています。ウェブサイトに掲載されている図がわかりやすかったので、真似して描いてみました(下図)。この製品の製造過程で起きている現象は、典型的なメイラード反応と言えるでしょう。
先月、「特許情報プラットフォーム」を紹介しましたが、これを用いて「麒麟麦酒」と「メイラード反応」をキーワードにして特許情報(公開特許公報)を検索してみました。以下に示したのが、その検索結果(3件)です。詳しいことをお知りになりたい方は、特許情報プラットフォームから公開特許公報や特許公報をご覧ください。
今回、食品領域におけるメイラード反応に関する研究開発状況を、特許情報から探ってみました。上述の特許情報プラットフォームを利用し、「メイラード」と各種キーワードの組み合わせで検索した結果が下の表です。「メイラード」というキーワードを「要約」あるいは「請求の範囲」に含む特許出願(1993年以降)は287件とそれほど多くなく、さらに「薬」や「食品」といったキーワードで絞り込むと、ずいぶん少ない数になりました。
もう少し細かいキーワードを組み合わせて検索を行った結果が下の表です。「阻害」がトップでした。加工食品では、メイラード反応を利用して、風味や外観(色)を向上させることがよく行われています。しかし一方で、メイラード反応による褐変や風味変化が好ましくない場合もあります。また、生体内で起こるメイラード反応と疾病との関連も指摘されています。このようなことから、メイラード反応を制御(阻害)する方法も検討されています。「味」や「香」が上位に顔を出しているのは、順当と言えるでしょう。
次に、「食品」と「メイラード」の組み合わせによりヒットした114件の出願人を見てみました。下の表には、2件以上の出願があった法人(企業あるいは大学)をまとめました。食品、医薬、化学、化粧品関連の企業が多く、上位企業の出願内容を見ると、「阻害」に関係するものが目立ちました。
今回、メイラード反応関係の特許出願を検索し、ほんのさわり程度を紹介しました。関心をお持ちになられた方は、ぜひご自身で検索を行って、公報の中身をご覧になってみてください。メイラード反応に限らず、「特許情報プラットフォーム」は便利なツールです。一度ご利用してみることをお勧めします。
食品のトピックス | 09:46 | 2015.06.25 Thursday |