2015.11.25 Wednesday
イヌとネコの科学
No.201
今回のタイトルは、「別冊日経サイエンス209」の「犬と猫のサイエンス」(2015/11)というタイトルから拝借したものです。この本は今年(2015/9)発行された「SCIENTIFIC AMERICAN」の別冊「The Science of Dogs & Cats」の訳書ですので、英語が得意な方はそちらを読まれてもよいでしょう。
表紙のデザインは、やはりオリジナル版の方が一歩優っているように感じられます。私はペットフードに関する研究を手掛けるようになってからイヌやネコに対する関心が高まり、この手の本にもよく目を通しています。本書は美しい写真や図版が多く、楽しみながら読み進むことができます。
本書は4つのチャプターから構成され、「ペットの心理学」から始まります。まず、「なぜペットと暮らすのか」という素朴な疑問に答えてくれます。また、イヌの複雑な感情についての科学的な記述は、興味深いところです。最近、私たちの学科(北里大学動物資源科学科)で関心をもつ学生さんが多いアニマルセラピー(動物介在療法)の可能性についても、客観的に論じられています。
【CHAPTER 1 ペットの心理学】
- 人はなぜペットと暮らすのか
- 友情の科学
- アニマルセラピーを考える
「ようこそ犬の世界へ」では、オオカミからイヌへの進化の過程を解説したうえで、彼らの知性が解き明かされていきます。さらには、イヌのがん研究が人間のがん治療に貢献できそうな状況が紹介されています。「イヌの太りすぎ」が気になる飼い主の方も少なくないかと思います。
【CHAPTER 2 ようこそ犬の世界へ】
- オオカミからイヌへ
- 犬の才能
- 犬のこころと行動
- 犬はモラリスト
- 愛犬が教えてくれるがん治療の手がかり
- そのイヌ太りすぎ
「イヌ・ネコ」とひとくくりにされることが多いですが、ネコはイヌとはかなり異なった動物です。「猫の不思議」のチャプターでは、それが科学的に論じられています。私も、ネコに関する疑問のいくつかが解消しました。イヌは姿形や性格が品種によって多様ですが、ネコはそれほど違いません。働き者のイヌは様々な目的のために品種改良されてきましたが、仕事に不向きなネコの品種改良にはあまり目が向けられなかったようです。
【CHAPTER 3 猫の不思議】
- 1万年前に来た猫
- 知りたい!ネコのすべて
- 脳を操る寄生生物トキソプラズマ
最後のチャプターでは、イヌやネコに限定せずに、動物の「こころ」の問題が取り上げられています。「共感」の気持ちはイヌのような感情豊かと思われている動物だけでなく、ウマ、サル、ライオン、さらにはマウスにもあるかもしれないそうです。死を「悼む」という高度とも言えそうな感情も、イルカ、チンパンジー、ゾウ、キリン、ネコには備わっている可能性があるとのことです。
【CHAPTER 4 動物のこころ】
- 動物は共感するか
- 死を悼む動物たち
- 動物の社会的知性を探る
4つのチャプター中には、「ネコの不思議」、「ペットを見れば飼い主がわかる」、「犬はあなたを愛しているか」、「知りたい!ネコのすべて」、「人を撃った話」といった読みやすいコラム的な記事も挿入されています。
各項の末尾には、「もっと知るには・・・」として参考文献があげられています。ただ、いずれも英語のものですので少々敷居が高いかもしれません。イヌとネコについて勉強したいと言う方に、『イヌの動物学』と『ネコの動物学』をあげておきます。
その他のトピックス | 12:23 | 2015.11.25 Wednesday |