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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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生薬「阿膠」とメイラード反応

No.223


 「阿膠(あきょう)」という生薬があります。この生薬は血液機能を高め、とくに貧血や婦人病に効果があると言われています。その他、便通改善、骨粗鬆症予防、肌荒れ防止などにもよいとのことです。製品として販売されている阿膠の多くは、下の写真のような薄い羊羹状の外観のものです。


 羊羹状と書きましたが、実は非常に固いもので、切ったり折ったりするのは難しく、金槌を使ってやっと砕くことができる代物です。下の写真は、私たちの研究室で実験に用いる際に金槌で砕いた阿膠です。実物は、茶色いガラスの破片といった感じです。


 阿膠の主原料は、ロバの皮です。他の動物の皮でも似たような生薬を作ることはできるようですが、その価値はあまり高くないとのことです。中国の山東省東阿県(下地図)が原産地で、阿膠は「東阿の膠(にかわ)」ということです。


 阿膠は中国では古くから知られている貴重(高価)な生薬で、楊貴妃は美容のために用いていたとの記録があります。また、西太后は阿膠で不妊治療に成功したそうです。現在は日本でも入手でき、阿膠を配合した漢方薬も多く見られます。


 私は初めて阿膠を見たとき、その色に注目しました。私たちの研究室では、メイラード反応の研究に取り組んでいますが、阿膠の茶色はまさにメイラード反応により生じるものです。メイラード反応は、アミノ化合物(アミノ酸など)と還元糖(グルコースなど)を加熱した際に容易に起こり、加熱加工・調理をする食品中ではごく普通に認められます。


 動物の皮を主原料とするということは、物質的にはコラーゲンから作られるということになります。 私たちの研究室では、コラーゲンを原料としたメイラード反応生成物を食品などに用いる機能性素材として開発しました。 これは、抗酸化作用や血圧降下作用などを有する新規な素材として、特許取得にも至っています(特許第5326489号)。


 阿膠の抽出液を調べてみると、メイラード反応のマーカーであるカルボキシメチルリジン(下図)などが検出されました。予想通り、阿膠の製造過程ではメイラード反応がかなり進行しているようです。


 私たちが開発したコラーゲン由来の素材は、中国では生薬(阿膠)の形で数千年前から摂取されてきた可能性があります。新規性という点では残念な気がしないでもありませんが、この素材の保健的効果には自信を持つことができました。メイラード反応により生成するメラノイジンなどの物質は複雑な高分子であるため、その解析は容易ではありません。今後、阿膠や私たちが開発した素材に含まれる有効成分の解明が待たれます。



この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
191:メイラード反応と特許(2015/06/25)
93:食品と生体におけるメイラード反応(2011/05/25)
36:コラーゲンとメイラード反応(2009/01/13)
32:ホットケーキとメイラード反応(2008/11/10)
9:コラーゲンとコラーゲンペプチド(2007/11/26)
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