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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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コオロギのパスタ

No.224


 「昆虫を食べる」という記事を、6年前に書きました。また、『昆虫食入門』という本も、研究室のホームページで紹介しています。私は昆虫を食べるのが好きなわけではありませんが、昆虫食への関心は強い方だと思います。今回、ちょっと珍しい食品が手に入ったので、紹介することにします。下の写真で、学生さんが手にしているのは、コオロギ粉を使ったパスタのパッケージ(左)と中身です。


 パスタの色がコオロギを連想させます。パッケージ(下写真)には、確かに「コオロギ粉」の記載があります。「20%」とのことですので、結構入っていると言えるのではないでしょうか。


 一方、下の学生さんが手にしているのは、「ジャングルバー」というコオロギ粉を使ったチョコレートバーのようなお菓子です。


 見た目(下写真)はあまり美味しそうではありませんが、クランベリーチョコレートバーといった感じのものです。ただ、じっくりと味わっていると、何となくコオロギっぽい味(?)がしてきました。


 これらの製品のパッケージには、「コオロギは“エビ”や“カニ”と非常に近い生き物です。“甲殻類アレルギー”をお持ちの方が食べないよう十分にご注意ください。」とあります。では、コオロギを食品として食べる意義はどのへんにあるのでしょうか。


 コオロギは栄養価が高いと言われており、貴重なタンパク源として食している国(地域)があります。タイなどでは、食用コオロギの養殖が大きな規模で行われています。米国やヨーロッパでも、コオロギ粉を使用したお菓子などの食品が販売されています。コオロギの一般組成(下表)は豚肉や鶏肉と大差ない感じで、食肉と同程度の良質な動物性タンパク質を含む食品と言えるでしょう。


 家畜による食肉生産は、経済的なコストや環境への負荷が大きいことが指摘されています。このようなことを背景にして、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)は、「食用昆虫 ―食料および飼料の安全保障に向けた将来の展望―」を発表しました。食料タンパク質の生産という点だけで見ると、コオロギは牛の6分の1以下、豚の2分の1以下の飼料で賄うことができます。


 食料資源としての昆虫に関する研究に力を入れているのが、オランダのワーゲニンゲン大学のグループです。彼らはFAOとの国際シンポジウムを開催し、2014年には世界で最初の昆虫食の学術雑誌である「Journal of Insects as Food and Feed(食用・飼料用昆虫学雑誌)」を刊行しました。日本でも、徳島大学のグループによる「フタホシコオロギ食用化プロジェクト」が始まっています。食用昆虫の研究領域は、今後、発展していくのでしょう。


 以前も昆虫食に関する本を紹介しましたが、今回、親しみやすいものを2冊あげておきます。『昆虫を食べる!』は発行されたばかりの本で、昆虫食の文化、科学、料理といった広範な内容がコンパクトな新書に盛り込まれています。もちろん、コオロギも登場します。『食べられる虫ハンドブック』は、食用に適した132種の昆虫がカラー写真と共に解説されています。「日本初の食用昆虫図鑑」とのことです。昆虫好きの方なら、かなり楽しめるでしょう。



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食品のトピックス | 11:14 | 2016.11.10 Thursday |