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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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夢見る熟豚4weeks

No.232


 ヒレかつサンドでお馴染みの「井筒まい泉株式会社」は、私たち北里大学食品機能安全学研究室と共に研究開発を進めてきました。


 取り組みの成果として、とんかつに用いる豚肉に最適な熟成法を見出すことができました。井筒まい泉社では、この方法により調製した豚肉を、オリジナル熟成豚肉「夢見る熟豚4weeks」と名付け、ブランド展開を始めています。


 以前、「熟成肉は美味しくて体に良い」で解説しましたが、家畜の筋肉は「熟成」という過程を経ることにより、食肉らしくなります。


 このとき起きる変化のひとつに、筋肉タンパク質の分解があります。タンパク質の分解により生成するペプチドやアミノ酸は、様々な味を有しており、これらが嗜好性を向上させます。


 食肉の熟成中に生成するペプチドの中には、 血圧降下作用や抗酸化作用を有するものがあることを、 私たちは見出しました。 熟成によって食肉は、 美味しさを増すだけではなく、 健康に役立つ食品になっている可能性があります。 下のグラフは、 血圧降下作用の指標である ACE 阻害活性の変化を、 豚肉の熟成期間中に調べたものです。


 ところで、食肉の熟成には大きく2種類の方法があります。「ドライエイジング」と「ウェットエイジング」です。ドライエイジングは、ゆっくりと乾燥させながら熟成を行う方法です。一方、ウェットエイジングは肉を真空包装して行う低コストの方法です。下の写真は、ドライエイジングを行っている牛肉熟成庫内の様子です。


 私たちは、 美味しくて体に良い豚肉をもたらす熟成法の開発を目指しました。 その結果、 ウェットエイジングとドライエイジングを組み合わせた新たな熟成法に辿り着きました。 この方法により調製されたのが、 オリジナル熟成豚肉「夢見る熟豚4weeks」です。


 ウェットエイジングとドライエイジングを組み合わせた熟成法による豚肉を用いて、とんかつを調製しました。このとんかつの嗜好性試験(10名のパネラーによる5段階評価)を行なった結果、評価5項目いずれも顕著に高い評価が得られました(下グラフ)。


 井筒まい泉社のレストランでは、すでに「夢見る熟豚4weeks」を用いた「熟成ロースかつ膳」の提供が始まっています(下写真)。今までにない美味しさのとんかつとして好評を博しています。


 今回紹介した「夢見る熟豚4weeks」の開発に関わる技術は、2件の特許出願を行っています(特願2015-154703, 特願2017-032834)。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
206:TPPと牛肉・豚肉(2016/02/10)
196:霜降りか赤身か(2015/09/10)
189:熟成肉は美味しくて体に良い(2015/05/25)
食品のトピックス | 14:57 | 2017.03.10 Friday |