2017.03.27 Monday
「a-iペプチド」と「AIペプチド」
No.233
最近、アイシア株式会社の「a-iペプチド」と株式会社明治の「AIペプチド」は同じものなのかというご質問を受けました。このトピックスにも何度か登場している「a-iペプチド」は、ペットフードメーカーのアイシア社が権利を持つ商標です。
「a-iペプチド(エーアイペプチド)」は、「MiawMiaw」シリーズなどのペットフードに用いられている魚肉や畜肉を原料として調製される素材です。一方の「AIペプチド(エーアイペプチド)」は、「明治メイバランス リハサポート」という製品に利用されている牛乳ホエイ由来の素材です。したがって、両者はまったくの別物です。
「a-iペプチド」と「AIペプチド」は、非常によく似た名称だと思います。しかし、両者はそれぞれ独立した商標として、特許庁に登録されています。商標の出願書類には、「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」という項目があります。
「a-iペプチド」では非常にシンプルな記載で、「ペプチドを含有する飼料」となっています。一方、「AIペプチド」の方はかなり盛り沢山で、「食餌療法用食品及び飲料、乳幼児用食品及び飲料、乳幼児用粉乳、サプリメント、タンパク質を主成分とする流動状・ゼリー状・液状・粉状・固形状の加工食品、乳製品、食用油脂、カレー・シチュー又はスープのもと、豆、豆乳、食用たんぱく、茶、コーヒー及びココア、菓子及びパン、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、穀物の加工品、食用グルテン、即席菓子のもと、清涼飲料、果実飲料、乳清飲料、飲料用野菜ジュース」と列記されています。
似たような名称でも、「商品や役務が非類似」であれば、商標として認められます。「a-iペプチド」が商標として登録されたのは、平成25年3月です。その3年半後の平成28年9月に、「AIペプチド」が登録されました。「a-iペプチド」の出願時に、食品も商品・役務としていれば、おそらく後発の「AIペプチド」は商標として認められなかったでしょう。ただ、アイシア社はペットフード以外に「a-iペプチド」を使用することはありませんから、現状でも困るようなことはなさそうです。しかし、「商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務」は、商標を出願する際にはよく考えないといけない項目であることは、ご理解いただけるでしょう。
近年、商標に関係したニュースをよく目にするようになりました。以前取り上げた「においの商標」もそうですし、ごく最近の話として「色彩の商標」がありました。先日(2017/3/1)、特許庁は「色彩」の商標登録を初めて認めました。セブン−イレブン・ジャパンが看板などに用いている白地にオレンジ、緑、赤の縞模様と、トンボ鉛筆の消しゴム「MONO」の青、白、黒の3色からなる色柄の2件です。
商標など知財(知的財産)に関心をお持ちの方に役立つ書籍を1冊紹介しておきます。『楽しく学べる「知財」入門』(稲穂健市著, 講談社現代新書, ¥860, 2017/2)です。入門書ではありますが新しいものなので、知財に関する最新の情報が盛り込まれています。商標にもかなりページが割かれていて、今回紹介したような事例も解説されています。
以前紹介した「特許情報プラットフォーム」を利用すると、特許庁に登録されている商標を検索することができます。利用方法は簡単なので、ぜひ身近なブランド名や商品名などを調べてみてください。
その他のトピックス | 13:00 | 2017.03.27 Monday |