2017.06.12 Monday
オリョールはロシアの魂
No.238
一昨年、昨年に続いて、今年もロシアを訪れました。今回は、モスクワから南に約360キロの都市オリョールを紹介します。人口32万人のオリョールを州都とするオリョール州は、ベラルーシやウクライナの国境に近く、原子力発電所事故のあったチェルノブイリ(ウクライナ)からも400キロほどのところにあります。
モスクワからオリョールに向かって車で南下すると、明らかに景色が変化し、やがて緑豊かなオリョールに到着します(下写真)。ロシアの中では比較的気候に恵まれたオリョール州は、農業を基幹産業としています。
オリョールで、ロシアにおける各都市の位置付けについての話を聞きました。それによると、モスクワは心臓で、サンクトペトロブルグが脳だそうです。オリョールは、なんと魂とのことです。詳しい説明を聞きませんでしたが、オリョールはロシア文学を代表する文豪ツルゲーネフを生んだことなども関係しているようです。
国立公園内に保存されているツルゲーネフの住んだ家(上写真)を訪れる機会を得て、彼の一生を初めて知ることができました。オリョールの環境が、ドストエフスキーやトルストイと並び称される文豪の誕生に影響したのは確かなようです。
今回のオリョール訪問は、オリョール州立農業大学(上写真)に招かれたことによるものでした。この大学は、1975年創設の比較的若い大学です。獣医学、バイオテクノロジー、農業経済学、生態学、農業工学といった学科と2つの研究所から構成され、技術者の養成や農業および関連産業発展への貢献に重点を置いています。若い大学ではありますが、学長(下写真)をはじめとする教職員は熱意にあふれていました。
私が教員や大学院生を対象として行った講演は、食品の保健的機能や機能性食品の開発に関するものでした(下写真)。私たちの研究室で目指している「美味しくて体に良い」食品の重要性を、データを交えて語りました。皆さん熱心に聴いていただいた様子で、講演後の質疑も活発でした。
研究面では、大学や州政府関係者との意見交換を重ね(下写真)、機能性食品など付加価値の高い食肉・食肉製品の誕生を目指したプロジェクトの方向性を定めることができました。オリョール州立農業大学との学術面での交流は、今後も続くことになるでしょう。
オリョールは緑豊かな魅力的な街ですが、第二次世界大戦中にドイツ軍が占領する際に市街地は徹底的に破壊されたそうです。それでも、ロシア正教の教会など、戦後再建された建造物がいくつもあり、美しい街並みを再建しています(下写真)。
ソビエト連邦の崩壊後、ロシアの農業生産は大きく混迷しました。畜産においても、一時生産規模が大きく縮小しましたが、豚肉や鶏肉ではかなりの量を輸出できるまでに復調しました。現在、ロシア産畜産物の市場として日本にも熱い視線が向けられています。私たちがロシアの食肉や食肉製品を目にする機会も近いかもしれません。
その他のトピックス | 14:33 | 2017.06.12 Monday |