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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ロシアのスーパーマーケット

No.239


 前回の「オリョールはロシアの魂」で、モスクワの南にあるオリョールという街の様子を紹介しました。今回は、オリョール州立農業大学の関係者に案内されたスーパーマーケットの様子を中心にお伝えします。


 今回訪れたのは、ДоброСтройというチェーンのオリョール市郊外にある店舗です(写真上)。モスクワでも、いくつかのスーパーを訪れましたが、写真撮影を許してくれるところはほとんどありませんでした。唯一の例外として、一昨年、関係者に連れていってもらった高級スーパーがありました。その様子は、「ロシアの乳製品」「ロシアの食肉事情」をご覧ください。


 まず、オリョール州立農業大学の卒業生が衛生責任者を務める精肉売場に足を運びました。下の写真の背後にガラス越しに見えるのが、食肉を処理する場所です。内部を見せていただきましたが、写真撮影は許されませんでした。巨大な冷蔵庫には、牛や豚の半丸枝肉(家畜の屠体を縦に分割したもの)が保管されており、この場所で部分肉(ロースなど)にされていました。新しい施設ということもあり、かなり高いレベルの衛生管理が行われていました。


 牛肉は、ロシアの食肉の中でも自給率が低いものですが、このスーパーで販売されていたものは、オリョール州周辺で生産されたシャロレー種やアンガス種の牛肉とのことでした。もちろん赤身肉です。


 現在、日本への輸出を目指しているというロシア産の鶏肉は、品質だけでなく価格でも国際競争力が高そうです。店頭価格85ルーブル(1kg)というのは、約160円です(下写真)。


 ロシアの食肉製品は、「ロシアの食肉事情」でも紹介しましたが、ドイツ風の割合とオーソドックスなものが多く見られます。同行していただいたオリョール州立農業大学の食品製造学の教授に、ロシア産の発酵ソーセージ(サラミ)について詳しく説明していただきました(下写真右)。


 乳製品についても、「ロシアの乳製品」でかなり詳しく解説しましたので、そちらもぜひご覧になってください。ロシアは牛乳・乳製品の消費量が多い国であることは、広大な乳製品の棚からも察することができます。近年ロシアでは、急速にダノンブランド製品が浸透してきているそうです。チーズでは、輸入品の増加が、選択の幅を広げているとのことでした。


 日本人が気になる食品として、魚介類があります。鮮魚もそれなりに並べられてはいますが、ロシアのスーパーで目立つのは干物や燻製です(下写真右)。小さなものからかなり大きなものまで、バリエーションは豊富です。


 果物や野菜の類は、日本に比べるとやや寂しい感じがします。ロシアの大部分が寒冷地ということは大きな理由でしょう。ロシアの代表的料理であるボルシチに欠かせない赤いビーツだけは、どこのスーパーにもたくさん置かれています(下写真右)。


 果物や野菜は、ファーマーズマーケットや露店(写真下)で、新鮮で安価なものを手に入れるという人が多いという事情もあるようです。


 日本ではやや存在感が薄くなってしまった缶詰ですが、ロシアではまだ主要な食品形態のようです。牛、豚、鶏といった家畜の絵が描かれた缶詰が、多種類かつ大量に配架されています。海外でこの種の加工製品を手に取ったときに歯がゆいのは、英語以外は何が書いてかるのかさっぱりわからず、手がかりは絵柄だけということです。


 意外に思われる方もいるかもしれませんが、ロシアのパンはなかなか美味しいです。ホテルは別格としても、大学の食堂でもかなりのレベルのパンが出てきます。このスーパーで置かれているパンは、ここで焼かれているものです(下写真左)。売り場からも、大きなパン工房が見え、パンの生地を捏ねる音が聞こえていました。ウオッカが大量に配架されているのは、いかにもロシアらしいと思いました(下写真右)。


 ロシアは菓子類の生産が盛んな国でもあります。なかでもチョコレートは人気があります。モンゴルなどロシア(旧ソ連)と関係の深い国では、ロシア製のチョコレートをよく目にします。下の写真のチョコレートは、ロシアで一番人気のあるチョコレートかもしれません。ロシア土産としていただいた方もいるかもしれません。空港や駅の売店で必ず売られているブランドですが、スーパーではかなり安価で入手できます。ロシアに限ったことではありませんが、スーパーで海外旅行のお土産を探すのはいいと思います。


 寿司の人気が高いロシアでは、日本食全般に対する関心もかなり高いようです。オリョールのような日本人がほとんど住んでいないところのスーパーでも、それなりに日本の食品を手に入れることができます(下写真)。駐在員など日本人が多いモスクワのような大都市では日本食レストランも多く、ほとんど日本食に不自由しないのではないでしょうか。


 旧ソ連時代のスーパーは、品揃えが非常に悪いと言われていました。今日のロシアのスーパーやショッピングセンターでは、その名残はまったく感じられません。米国のスーパーにいるような錯覚さえ覚えます。スーパーに置かれているチラシも日本のような1枚ものではなく、米国で一般的な冊子形式の読み応えのあるものです(下写真)。


 FIX Priceのチェーン店が、ロシアでもスーパーの強敵になりつつあるという話を耳にしました。日本でお馴染みの100円ショップ(ダイソーなど)のような形態です。ロシアのFIX Priceは、米国の1ドルショップや日本の100円ショップをお手本にしたもののようですが、配架されている製品はまだ少々ガラクタ感があります。ロシアのFIX Priceでは、25ルーブル(約45円)や50ルーブル(約50円)のコーナーがあります(下写真はモスクワの店舗)。


 スーパーとは少し話が離れますが、モスクワの地下街で日本のダイドーの自動販売機を見かけました(下写真)。日本以外の国では、空港や駅構内など限られた場所以外でしか自動販売機が置かれていません。やがて、モスクワ(ロシア)の至るところで、自動販売機を目にするようなときが来るのかもしれません。


 今回、オリョールで訪れたスーパーマーケットの様子を中心に紹介しましたが、学術的な調査ではなく、主観による見聞記です。ロシアやモスクワを旅行先に選ぶのを躊躇される方も多いようですが、実際にモスクワを訪れて感じたのは、かなりの治安のよさでした。キリル文字の表記に閉口することはありますが、むしろ旅行しやすいところだと思います。赤の広場などの観光名所だけでなく、スーパーもロシアの魅力を伝える場所でしょう。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
243:ドバイの食事情(2017/08/25)
238:オリョールはロシアの魂(2017/06/12)
226:キャビアの話(2016/12/12)
205:ロシアの食肉事情(2016/01/25)
204:ロシアの乳製品(2016/01/12)
203:ロシア料理は美味しい(2015/12/25)
176:バレンシア中央市場(2014/11/10)
173:インドの食肉事情(2014/09/25)
162:インドネシアの食品市場(2014/04/10)
151:モンゴルの「赤い食べ物」(2013/10/25)
67:世界の市場(2010/04/26)
食品のトピックス | 11:30 | 2017.06.26 Monday |