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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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機能性表示食品が続々登場

No.240


 2015年に機能性表示食品制度が始まり、その製品届出数は1000件に達します。特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品との違いがわかりにくいという声もありますが、機能性表示食品は確実に浸透してきています。


 個別許可型の特定保健用食品に比べると、機能性表示食品は一定の条件をクリアすれ保健的機能を表示できるので、ハードルが低いと言えるでしょう。特定保健用食品にはない新たなカテゴリーの製品も登場しています。今回は、そのいくつかを紹介します。


 盛んに研究がされてきたにもかかわらず、特定保健用食品には存在しないカテゴリーに、抗ストレス食品や抗疲労食品があります。機能性表示食品では、すでにこれらが多く届出されています。下の写真のGABAを配合した製品(グリコ)でも、「ストレス社会で闘うあなたに」という曖昧な表現が、機能性表示食品になって「ストレスを低減する」というダイレクトな表現になりました。


 抗ストレス関係の機能性表示食品は、GABA(γ―アミノ酪酸)を関与成分とするものを中心に51製品が届出されています(下写真)。現在、抗ストレス乳酸菌などの研究開発も盛んに行われており、新たな関与成分を配合した製品の登場が予想されています。

 

 ストレスと密接な関係がある疲労をターゲットとした食品も約39件が届出されています。主な機能性関与成分として、テアニン、クエン酸、還元型コエンザイムQ10といったものがあります(下写真)。

  

 いわゆる美容食品の範疇に入る肌の潤いを保つ機能性表示食品は、91件が届出されています。大部分は、ヒアルロン酸ナトリウムやグルコシルセラミドを配合していますが、アスタキサンチンなども用いられています(下写真)。資生堂はグルコシルセラミドを配合した肌トクホ(特定保健用食品)を2011年に申請し、2016年にようやく消費者庁より許可を得ました。グルコシルセラミドを配合した機能性表示食品が多数登場する中で、苦労して許可を得た肌トクホの価値をどのように見出すかはなかなか難しい課題です。


 記憶力のサポートに関連する機能性表示食品も、58件とかなりの数になっています。機能性関与成分として、イチョウ葉由来のフラボノイド配糖体とテルペンラクトンを使用しているものが多く、EPA・DHAやアントシアニンを配合したものも見られます(下写真)。


 グリシンを機能性関与成分とするグリナ(味の素)が、最初の睡眠をサポートする機能性表示食品として届出されました。その後、睡眠関連の機能に関するものは、39件に達しています。L-テアニンを配合したものが圧倒的に多く、GABAやプロリン-3-アルキルジケトピペラジンも利用されています(下写真)。

 

 冷え性を食事内容により改善できることは、古くから知られていました。体温維持をコンセプトとする機能性表示食品が18件届出されています。モノグルコシルヘスペリジンとショウガ由来ポリフェノールが、これらの食品の主な機能性関与成分となっています(下写真)。

 

 筋力維持に関連する機能性表示食品は、今後増えていくことが予想されています。加齢とともに筋肉量が減少し、筋力の低下が起こるのがサルコペニアです。3―ヒドロキシ-3―メチルブチレート(HMB)、ロイシン、ブラックジンジャー由来5,7-ジメトキシフラボンといった成分が利用されています。


 これまで特定保健用食品(トクホ)にはなかった機能を謳った製品が、機能性表示食品として次々と登場しています。今回紹介したものはサプリメント形態のものが多かったのですが、食品らしい機能性表示食品も増えています(下写真)。

 

 トクホは費用と時間がかかり、かなりハードルの高い制度でした。機能性表示食品制度ができて、短期間のうちに多くの製品が誕生しました。これは、トクホの抱えていた課題を一部解消したとも言えますが、ハードルが低いゆえの機能性や安全性に対する懸念の声も存在します。機能性表示食品制度は経済振興のために検討期間が短く見切り発車的に始まったのが否めないだけに、今後適切な見直しを行う必要があると思われます。



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食品のトピックス | 14:51 | 2017.07.10 Monday |