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北里大学獣医学部教授・有原圭三(株式会社フード・ペプタイド代表取締役)が、食品を中心とした情報を発信します。

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ドバイの食事情

No.243


 この夏(2017/7)に中東・ドバイ(Dubai)を訪れた知人から、食料品スーパーの様子を写真に撮ったので、よかったら使ってくださいとの連絡がありました。私自身は、ドバイに行ったことはありません。2年前にドバイ経由でエジプトを訪れる予定がありましたが、シナイ半島の政情不安から、この出張はキャンセルとなりました。


 アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7つの首長国の一つが、ドバイ首長国です。この国の住民の8割近くはインド人を主とする南アジアからの労働者で、ドバイは「世界で最も美しいインド人の町」と呼ばれることもあるそうです。アラブ圏にある特異な国といってよいかもしれません。


 ドバイはヨーロッパの極東とアジアの極西に位置することを活かし、金融と物流の拠点に発展しました。一方、「MENASA」と呼ばれる地域があります。Middle East(中東)、North Africa(北アフリカ)、South Asia(南アジア)の22か国からなる大きな経済圏です。ASEANにおけるシンガポールのような役割を、MENASAではドバイが演じつつあります。


 イスラム圏の食では、「ハラル(Halal)」が重要です(No.163「イスラム市場とハラル食品」参照)。ハラルは「イスラム法で許されたもの」という意味で、とくに食品の話として取り上げらることが多く、イスラム教徒がアルコールや豚肉を忌避することはよく知られています。しかし、ドバイはイスラム教徒以外の外国人居住者や旅行者が多いため、他の中東諸国に比べると食における制約が少ないようです。旅行者がアルコールを飲んだり、豚肉を食べたりすることも、それほど難しくないと言われています。


 ドバイには、いくつかの巨大なショッピングモールがあります。「ドバイ・モール(The Dubai Mall)」もそのひとつで、ここには「ウエイトローズ(Waitrose)」という英国資本の食料品スーパーマーケットがあります。その一角には、イスラム教で禁忌されている豚肉の専門店も置かれています(下写真)。


 食料自給率が低く、食品加工業も決して盛んではないドバイでは、スーパーの店頭に並ぶ食料品の多くが輸入品です。ウエイトローズのような高級スーパーの様子がドバイの食事情を的確に表しているわけではないでしょうが、並べられている食肉類を見ると、美しく上質そうな輸入品ばかりです(下写真)。


 ハム・ソーセージといった食肉加工品も、欧州からの輸入品を中心に品揃えがよく、値段を気にしないのであれば、様々な製品を容易に入手できるようです(下写真)。


 エミレーツ航空が、関西、中部、成田、羽田の各空港からドバイへの直行便を就航したこともあり、ドバイは日本から近い国になりました。近年、イスラム圏やMENASAの拠点であるドバイとの経済的な交流を深めようとする動きも大きいようです。食品の分野でも、ドバイ市場へ熱い視線が注がれています。


 私たちの研究室には、現在、エジプトからの特別研究員のReda Abdallahさんが来ています。来年3月(2018/3)に彼が帰国した後に、私はエジプトを訪れることになっています。おそらくドバイ経由でカイロに行くことになると思います。そのときは、再度、私自らの目で見たドバイの食事情をお伝えします。

この記事に関連する記事はこちらです。ぜひお読み下さい。
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277:フィレンツェ中央市場(2019/01/25)
273:ハラル会議 in インドネシア(2018/11/26)
268:メルボルンのクイーンビクトリア・マーケット(2018/09/10)
255:ジャカルタ周辺の食料品市場(2018/02/26)
239:ロシアのスーパーマーケット(2017/06/26)
176:バレンシア中央市場(2014/11/10)
173:インドの食肉事情(2014/09/25)
163:イスラム市場とハラル食品(2014/04/25)
162:インドネシアの食品市場(2014/04/10)
151:モンゴルの「赤い食べ物」(2013/10/25)
67:世界の市場(2010/04/26)
食品のトピックス | 11:46 | 2017.08.25 Friday |