2017.10.25 Wednesday
北里八雲牛の魅力
No.247
北里大学獣医学部は、北海道八雲町に広大な附属牧場を有しています。正式名称は、北里大学獣医学部附属フィールドサイエンスセンター八雲牧場と、少々長いものです。
下の地図に示したように、八雲町は函館と札幌の間に位置しています。北海道新幹線が札幌まで開業した暁には、新八雲駅が設置される見通しです。八雲町は、日本海と太平洋の両方に面した唯一の町としても知られています。漁業が盛んな町ですが、北海道における酪農発祥の地でもあります。
北里大学の八雲牧場(下写真)の面積は、東京ドーム80個分以上に相当します。ここでは、フィールドサイエンスセンター長の寳示戸雅之教授と小笠原英毅先生が中心となり、先駆的な肉牛生産の取り組みが行われています。「資源循環型畜産」を基本方針とし、化学肥料や農薬を一切使用しない完全自給飼料による肉牛生産です。
安全・安心な赤身牛肉の生産を目指した八雲牧場のアプローチは、放牧を主体として生産される「北里八雲牛」(下写真)の誕生をもたらしました。肉牛に詳しい方なら、写真からお分かりになると思いますが、北里八雲牛は日本短角種です(交雑種を含む)。
2003年に商標登録された「北里八雲牛」ですが、その中でもプレミアムな個体として「有機北里八雲牛」があります。一連の取り組みは、「有機畜産物JAS認証」(2009年)や「放牧畜産基準認証」(2010年)の取得につながりました。さらに、八雲牧場の「飼料自給率100%の赤身牛肉生産システム」は、「フードアクションニッポンアワード2010」の優秀賞を受賞しました。
北里八雲牛はまだ生産量が少ないので、どこでも入手できるというわけにはいきません。ただ、徐々に販路が拡大しており、北里八雲牛をメニューに取り入れたレストランなどもあります。北里八雲牛の良き理解者として、「東都生活協同組合」があげられます。そのホームページには、北里八雲牛や有機北里八雲牛が詳しく紹介されています。
ところで、北里八雲牛を2頭以上分娩した経産牛は、「草熟北里八雲牛」と名付けられています。肉質がやや硬いため、加工品などに利用されています。下の写真は、「草熟北里八雲牛塩麹ステーキ」のラベルです。以前、八雲牧場の小笠原先生が送ってくださり、学生諸君とたいへん美味しくいただきました。
草熟北里八雲牛を利用した加工品には、ビーフシチュー、ビーフカレー、ハンバーグ、牛丼の具、コンビーフ、ビーフジャーキーなどもあり、なかなかのラインナップです。
大学の附属施設である八雲牧場は、もちろん学生教育にも大きく貢献しています。たとえば、動物資源科学科の学生諸君は全員、ここで牧場実習を体験します。下の写真は、牛群を放牧地から牛舎まで移動させる「牛群大移動」の様子です。
現在、私たちの研究室(北里大学食品機能安全学)では、美味しくて体によい国産赤身牛肉の誕生を目指した研究に着手しています。この研究には、八雲牧場の協力が欠かせず、八雲牧場の小笠原英毅先生にはたいへんお世話になっています。下の写真は、北里八雲牛を熱く語っている小笠原先生です。
北里八雲牛に注目している方は多く、私も尋ねられることがありますが、高度な質問にはお答えすることができません。この記事をお読みになって、さらに北里八雲牛について知りたいという方は、どうぞ八雲牧場の小笠原英毅先生にご連絡ください。とても親切な先生です。
食品のトピックス | 17:01 | 2017.10.25 Wednesday |